主催者を13年続けていると、様々なコミュニティの盛衰を見ます。
最初は活動が盛んで参加者も楽しそうにしているが、やがて人が減り、いつの間にか消滅している会があります。
コミュニティが終わる原因を「4つの病」に喩えて詳説する第4回・最終回は、マンネリ化した活動を続ける「脳死」です。
思いばかり先走り、先に組織や体制を作ると陥りがちな「死因」です。
大半の死因は始まりに孕まれているので、コミュニティを始める人のための、長く続く場を作るヒントになればと思います。
コミュニティ「4つの死因」
なお、本稿で言及するのは個人やボランタリーのコミュニティで、コミュニティマーケティング等ビジネス系のものとは目的や前提が若干異なります。
本質に差は無いですが、各人に合わせ解釈下さい。
1)症状
続けることが目的となり、惰性で活動を続ける
2)原因
目的が曖昧
継続が自己目的化するのは目的が曖昧だからです。
「XXの活性化」「XXの創造」というお題目程度しか考えられてないと、そこが何のための会で、何をすればいいか、具体的に伝わりません。
目的の明確な参加者ほど、場に貢献することを通して、自分の目的を達成することを目指します。
趣旨が曖昧なら、自己利益のためだけに場を使おうとする人が増えるでしょう。
動機が自己承認
単に流行りに乗っただけの活動は、脳死に陥り易いです。
「何かしている自分になりたい」ことが動機だと、何のために何をするかを掘り下げるより、目立つ流行りものに手を出したくなります。
自身が目立ち、認められることが目的なら、場の目的を掘り下げる頭は働かないでしょう。
想いしかない
想いは大事ですが、想いしかないと空回りします。
運営メンバーも参加者も、仕事、成長、出会い、帰属意識など、何かしら個人的な動機で参加します。
善意や熱意だけということはありません。
主催者はその現実を直視して、場に貢献することがそれら動機を満たすよう、仕掛けを作らなければなりません。
そうしないと、目的なく人が溜まるだけの場になります。
形から入る
コミュニティを作るとなrと、チームや組織から考え始める人がいます。
理念やビジュアルなどを検討していると、何かしている気になれます。
しかし、目的の解像度が低い中で「形」だけ整えても人は動きません。
最初に集めた人が、期待通りの働きをするとも限りません。
結果、見栄えは立派でも、うまく回らない集まりができます。
見掛け倒しに引き寄せられて集まるのは、それなりの人々です。
なまじ運営会議や定例会のような「考えずに回る仕組み」があると、惰性で続けやすくなります。
止める根拠が無い
主催者も運営メンバーもマンネリを自覚しながら、何となく止められず、だらだら続けている会があります。
目的やあるべき姿、現実的な判断基準、そういったものを明文化したものがないと、誰も「止めよう」と言えず、何となく続けてしまいます。
止めることこそ主催者の判断ですが、自分の失敗を認めたくないため、止められない人もいます。
3)予防
目的を掘り下げる
全ては「目的」から始まります。
目的から、場に相応しい人や活動、文化、組織のあり方など、全てが決まっていくためです。
自身の目的・動機と、場の目的を言葉にしてみて、両者が整合することを意識します。
参加者価値を言葉にする
場には「参加する理由」が必要で、参加動機が場の目的と整合しなければ、持続可能にはなりません。
技術力向上を目的としたコミュニティなら、参加者が自身の知見を場に共有することで、他の参加者のスキルが上がり、自らは評判や新たな機会を得る、という状態です。
場に貢献することが、自身にとっても価値になる仕組みを作るのです。
動機・目的が固まるまでは、早く小さく試行する
行動する前に目的を明確にすることは難しいです。
実践を通じて明確になるからです。
メンバーも、一緒に何かに取り組まないと適性が分かりません。
まずは単体イベントから始め、自身の目的や動機の解像度をあげ、賛同者を徐々に巻き込み、持続可能な形が見えた段階で、組織にする方が確実です。
公式なものなら「準備委員会」として、明確に助走段階と本番とを分けるのも一案です。
最初から大々的にやると方向転換も難しいですし、稼働しない人をいきなり辞めさせるのも、要らぬ波風を立ててしまいます。
停止基準を設ける
惰性を防ぐには、止める根拠を持つことです。
「毎回5人が登壇し、100人に達したら解散」する100人カイギ、期間限定の会などは明確です。
人数が一定以下になったら、年間活動が一定以下になったら、など、活性を定量基準にする方法もあるかもしれません。
本当は主催者が「あるべき姿」を明確に持ち、そこからずれたら自ら判断を下すのが理想です。
しかしそれは人に依存しますし、情に引きずられがちなので、難しいです。
八丁堀会 会長でWASEDA NEO プロデューサーでもある高橋龍征氏がnoteで発表した「コミュニティ『4つの死因』…
運営メンバーの任免基準を設ける
主催者含む運営メンバーを変えるだけでも新陳代謝の効果があります。
体制変更はリスクを伴いますが、新しい視点を入れ、場を活性化することもあります。
何も活動していない「昔の人」が幹事に名を連ねていると、今活動している人を興醒めさせます。
4)対症
目的を言葉にしてみる
惰性に陥るのは、主催者の目的が不明確で場の趣旨が曖昧だからです。
ただ、活動を続けてきても明確にできていない目的を具体化できるかは覚束ないですし、目的が曖昧という自覚があれば改善されているはずなので、現実的には難しいところもあります。
人に壁打ちしてもらうのが良いかもしれません。
関係者と意識を合わせる
運営メンバーが惰性に陥っているなら、人を変えるのもいいでしょう。
相手も出来ることなら辞めたいと思っているかもしれません。
負荷が高い、自分の当初の期待と異なる、やることが曖昧、人間関係で付き合っただけ、など、様々な思いがあるでしょう。
それらを解消して続けるのか、辞めるのか、話し合う方がいいでしょう。
存続の基準と期限を設ける
いきなり止める判断は難しいですし、事情も知らず反対する人もいなくはないでしょう。
よって、期限や、達成すべき状態や条件、そして、どの意思決定機関でどう存続を判断するか、決めてもいいでしょう。
続けたいなら、危機感が生まれるかもしれません。
自然消滅よりは納得してやめられるでしょう。
再起動する
「続けること」は、目的ではありません。
続けるに値しないことを続けると、他人の時間を奪い、自身の時間を浪費します。
それよりも、失敗を認め、それを学びに新たな場をつくる方が生産的でしょう。
目的が明確なら、手段としてのコミュニティを作り直す判断ができるはずです。
失敗を認められないなら、見栄で活動していたということかもしれません。
さいごに
良質な場は、色々な良い活動を生み出すベースとなる、可能性を秘めたものです。
皆様が良いコミュニティを作られることを祈念しております。
お付き合い頂き、ありがとうございました。
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