コミュニティ「4つの死因」-3.老衰

主催者を13年続けていると、様々なコミュニティの盛衰を見ます。

最初は活動が盛んで参加者も楽しそうにしているが、やがて人が減り、いつの間にか消滅している会があります。

コミュニティが終わる原因を「4つの病」に喩えて詳説する第3回は、新規メンバーが増えず、既存メンバーが減る「老衰」。

長く続いたコミュニティがかかりやすい死因です。

大半の死因は始まりに孕まれているので、コミュニティを始める人のための、長く続く場を作るヒントになればと思います。

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コミュニティ「4つの死因」

1. がん、2. 心停止、3. 老衰 *本稿 、4. 脳死

なお、本稿で言及するのは個人やボランタリーのコミュニティで、コミュニティマーケティング等ビジネス系のものとは目的や前提が若干異なります。
本質に差は無いですが、各人に合わせ解釈下さい。

1)症状

新規メンバーが増えず、既存メンバーが減る

2)原因

内輪で盛り上がる

場の健全な成長をもたらすのは「リピート」ですが、そのハードルが最も高いのが初参加時です。

場への理解や他参加者との関係が薄く、満足する可能性が低いからです。

初参加の場で、既存メンバーが内輪話で盛り上がり、ケアされなければ、次行く気になりません。

既存メンバーも悪気がある訳ではありません。
知らない人より、知っている人と話す方が楽しいのが人の性だからです。

お友達を優遇する

「主催者のお友達」というだけの招待者が多いと、自腹で来た人々はバカバカしく感じます。

「タダだから来る人」は場に貢献せず、本来の参加者をむしろ遠ざけます。

地位に媚びる

社会的地位のある人や有名人が特別扱いされ、自分が軽く扱われたら、また行く気にはなりません。

参加者の肩書を誇示すれば、肩書目当ての人々が引き寄せられます。
健全な人は、自分の立場を利用しようとする主催者とは距離を置きます。

結果、特別扱いされたい人とおこぼれに与りたい人とが打算で繋がります。
場の趣旨に関心もない面々は、やがて次の草刈場を求めて去るでしょう。

同質性は衰退を招く

同年代だけだと、異動・昇進や結婚・出産など、仕事や私生活の変化で来られなくなる人が同時期に増えます。

同業の会は無意味な序列ができやすく、若い人に忌避されがちです。

同じ人・同じことに飽きられる

世代が離れると価値観などを理解しにくいので、新しい人が定着しなければ、新世代は増えません。

同じ面々と同じことを続ければ、向上心や好奇心のある人から離れます。

主催者から老化は始まる

仲間内で楽しむのも権威に阿るのも人の本性です。
発想の限界や飽きによるネタ枯れも人の限界です。

主催者が自らを律しなければ、自然に流れます。

精神論で行動は変わらないので仕組みが必要です。

3)予防

参加や貢献の形を柔軟にする

参加形態が多様なら、制約ある人も参加できます。

・仕事の合間に参加できる、平日ランチ会
・子連れでも来やすい時間・場所・価格体系
・顔をだけ出すのも気軽なCash on
・家族や地域が制約にならないオンライン企画

貢献も、リモートサポート、オンラインでの提言など、色々な形がありえます。

参加者の声に耳を傾け、試しましょう。

メンバーを多様にする

年齢、性別、国籍、職業、家族構成、居住地など、多様な参加者の切実なニーズに対応すれば、変化に強くなります。

但し、軸がなければ「雑多」なだけで、まとまりが無くなります。

主催者が模範となる

知っている人と話をする方が心地いいので、意識的に律しなければ、内輪盛り上がりに陥ります。

主催者は、新人を歓迎し、相手を理解して然るべき人と繋げるなど、自ら最適行動を示します

新人に古参が偉そうにすることも禁じます。

初参加者ケアは、参加経路、目的、人物などの把握にも役立ちます。

公平を徹底する

人は無意識に優劣をつけるので、意図しなければ公平性も保たれません。

参加者として来るなら、上場企業の社長も有名人も一参加者と同等に扱います(来賓の場合や、セキュリティの配慮は別)。

公平を徹底しておけば、序列のような些事に煩わされません。
特別扱いが当然と勘違いした人もいなくなります。

先輩後輩など、あらゆる非合理な関係も入り込まないよう気をつけます。

優遇には説明責任を

割引や招待は、聞いて納得できる根拠が必要です。
協力したくなる具体的な貢献なら尚良いでしょう。

・記事化・コンテンツ化、撮影
・集客、拡散への協力
・モニターなど改善提案
・運営協力、会場無償提供、登壇
・今後一緒に企画する
・知見を提供するゲスト
・成立への協力

新しいことを試す「仕掛け」

新たな価値提供を続けられれば、老化は防げます。
精神論では変わらないので、仕掛けで対処します。

・異質な人とコラボしてみる
・無茶振りやノリを実現する
・「〇〇したい」と呟いた人をガチ支援
・頼めば何とかしてくれるイメージを確立する
・「こんなのどう?」と観測気球を上げる
・宣言する、約束する
・極端な理想の実現に挑戦する
・普段行かない場に行く
・知らない人に話し掛ける

実際形にすると、思いがけないニーズが見えます。
赤字にならないなど、試せる仕組みも必要です。

熟成を仕込む

時と共に場の価値が高まれば、老化を防げます。

念入りに人を選べば、やがて様々な分野で活躍し、場の価値が高まります。
半端な人を優遇するより健全と言えます。

学びの場なら、実践知を蓄積するなどです。

4)対症

主催者の自己満足か、参加者に価値を提供しているかは、参加者の人相や振る舞いを見れば自己診断できますが、判断力を失ったので自己満足に陥るという矛盾が難しいところです。

分科会を試す

既存メンバーが障害となるなら、新人中心の企画を試しても良いでしょう。

「若手を増やすための、30歳以下・3年以内の人の会」のような納得できる理由と客観基準を設け、無用な対立は回避します。

主催者を変える

人が変われば、根本から変わります。

代替わりには、仕組み・組織と、ビジョン・ルールも必要です。
任免基準と移行手順がないと、問題が生じます。
跡を継ぐ人の「現世利益」もないと、持続可能になりません。

実際、代替わりする仕組みが機能しているプライベート・コミュニティを殆ど見たことがないくらい、新しい主催者をつくるのは難しいものです。

代替わりは決めの問題

創立者が続けるか替わるか、どちらかが正しいということはありません。

創立者が退けば熱狂や尖り具合が減りますが、新たな層を呼び込み、組織化して、更に発展することもあります。

創立者が進化し続けられるなら、それも良し。
会社ではないので「一代限り」でも構いません。

どうするかは、状況判断と意思の問題です。

やめる

老化は避けられない「自然の摂理」です。

場は目的のためにあるもので、続けるために無理をするのは不自然です。

意義を果たしたなら、前向きに畳むのも一案です。
それでも情熱があれば、また新しく始めましょう。