セミナー集客、立ち上げ期に大事な4つのポイント

セミナーを2年間で300本作り、コロナ後一気にオンラインに移行して得た知見を、これからオンランセミナーを始める人と共有したいと思います。

オンラインセミナーの方法論全般は下記書籍に詳説したので、よろしければご参考ください。


今回は多くの人が悩む「集客」について。

集客で「確実に言える」4つのこと

1つ目は、大前提として「集客には目的が必要」ということです。何のために、どんな人を、どれくらい集め、どんなアクションをしてもらうかによって、どう人を集めるかは異なるからです。

2つ目は「集客は企画で決まる」ということです。刺されば何もしなくても人が来ます。ターゲットとコンテンツが整合していなければ、何をしても人は来ませんし、無理に呼べば逆に悪印象を広げるだけです。

3つ目は「集客は水物」です。刺されば何もしなくても人が来るといっても、あくまで「人が来る確率が高くなる」ということです。全く同じ内容・条件でほぼ同じ時期に同じ場所やって、入りが3倍違うこともあります。

4つ目は「最も確実な集客は “地上戦”」です。地上戦とは、「広告」や「バズ」といった「空中戦」との対比の喩えで、要は一人一人地道に口説くことです。

それぞれ詳しくお話ししていきましょう。

ターゲットの課題解決と自身の目的を整合させる

「誰のどういう課題に、どんなコンテンツを提供して、どう解決するか」という参加者価値と、「どんな人の、どんなアクションにつなげ、最終的に何を達成するか」というビジネス目的を整合させていないのに人を集めても、の目的は達成できません。

例えば、デザインの方法論を用いた発想法の研修の見込み顧客を発掘する目的で、入門編のセミナーをするとします。

ターゲットは自ずと、そのような研修を行う、おそらく大企業の、人事や事業部門の人材育成担当で、予算の執行や起案ができる人になるでしょう。

一方、参加者は自らの課題解決のためにセミナーに参加します。相手の課題に応じた解決策を相手に伝わるように届けなければ、「自ら望んで」来ることはありません。

ターゲット層が「既存の方法論では、既存の延長のアイデアしか出ないので、新しい方法論が必要だ」という課題認識を持っているという仮説を立ったとします。自分たちのコンテンツの価値を分析し、「自分ゴトと変革したいテーマとの”思いがけない掛け合わせ “から、イノベーティブなアイデアを創出する方法論」とターゲットが反応しそうな打ち出しを考え、実際に講座を打ってみるのです。

そうして狙い通りの層が、狙い通りの理由で来て、自分の望んだ通りのアクションをすれば、それが「正解」です。何かズレがあれば、その原因を分析し、改善策を具体化して、次回検証します。

ターゲットとコンテンツと目的とが整合するまで仮説検証と改善とを繰り返さなければならない、ということです。

目的なき集客は無意味

リード獲得が目的なら、ターゲット参加者数xコンバージョン率がKPIになり、ターゲット参加者数は参加者数xターゲット率で出せるでしょう。ターゲット層なら自ずとコンバージョン率は上がるでしょう。人が多すぎるとコミュニケーションの密度が下がり、コンバージョン率が下がるかもしれません。この時の「集客」で大事なのは、適正人数と「純度」の高さです。

上記の前提は、ターゲットとコンテンツと目的が整合していることです。コンテンツが狙った層「のみに」刺さり、来た人々が「自分の狙い通り」のアクションをしてくれる確率が高い状態になっていることです。

そこに至る前の段階なら、目的は「ターゲットとコンテンツと目的とを整合させる仮説検証」となります。その時の「集客」は、前述の通り、自分の仮説に有効なフィードバックを真摯にしてくれる人に来てもらうことであり、その人数は一人一人深く聞けるだけの人数であるべきです。

同じコンテンツでも、目的が異なれば、かように人の集め方や最適人数も異なります。

実際の目的は、登壇者やスポンサーとの関係構築、潜在層への認知を高めるためのPRなど多様で、必ずしも1つとは限りません。しかし、明確に言語化し、優先順位をつけなければ、なんのためにそのイベントをやるのか、何を持って成功と定義されるのか、そのために、どんな人をどれくらい集めなければならないのかが分からなくなります。

それらもなく「どうすれば人が集まるか」を考えても無意味でしょう。

「ゴミを販促しても、誰も買わない」

スタートアップ界隈の用語で「Customer-Problem-Fit」という言葉があります。要は、自分の商材が顧客に刺さった状態のことで、この状態に達する前に拡販しようとしても、商材が顧客の必要とするものになっていないので、押し売れば不満を持つ人を増やすだけですし、そもそも押しても売れないでしょう。

オンラインセミナーでも同じことが言えます。ターゲットに刺さらないものはどんなに集客しても参加者は増えないのです。何の役にも立たないもののパッケージを美しくして広告を打ちまくったところで、いらないものはいらないのです。

そんなターゲットとコンテンツが整合していない段階で、無理に頭数を集めれば、不満を感じて帰る人を増やすだけで、逆効果です。

逆に、企画が刺されば何もしなくても拡散され、次々と申し込みが入ります。何回か経験がありますが、有料にもかかわらず、公開当日に何もしなくても数十件の申し込みが入り、あっという間に満席になる、といったことも時々あります。

極論すれば、集客に頭を悩ませるくらいなら、何もしなくてもターゲットが集まる企画をする方がいいのです。

初期に必要なのは、頭数より「ガチ勢」

「刺さる企画を作る」。とても当たり前の話ですが、企画初期の段階では、ターゲット・コンテンツ・打ち出しが整合しません。考えてできるなら誰もそうしているはずです。

2年で300件のセミナーをやりましたが「必ず刺さる企画を作る方法」などわかりません。ターゲットに刺さる企画を作る最も確実な方法は、仮説を立て、世に出してみて、課題を見出し、原因を分析し、解決策の仮説を立て、改善策を実施し、さらに課題を見出し・・・といった仮説検証を繰り返し実行することです。

仮説検証段階で「頭数」は必要ありません。ターゲット層と合致し、ある程度の仮説の間違いは許容してくれ、真摯にフィードバックしてくれる、ごく少数の人々で十分です。そうでない層の頭数はむしろノイズであり、本来のターゲットの満足度を下げかねない存在です。

想定外の層に刺さってしまうこともある

ターゲットやその解像度が不十分なら、「新しいデザイン手法が学べます」という打ち出しをしてしまい、デザイナーや代理店のクリエイターが自己研鑽のために来るかもしれません。そういう人々が法人研修を発注する可能性は、残念ながら低いでしょう。

属性や課題感が異なれば、必要とするコンテンツも異なります。本来のターゲット層である「事業創造の手段としてのデザイン手法を知りたい、デザインの専門知識はない人」にはちょうどいいレベルの内容は、デザインを専門とする人々には「初歩的」と不満を感じ入る可能性があります。両者は同じセミナーで混じらない方がいいのですが、打ち出しが幅広だと、両者が混じる事態が発生します。

最初はどうしても自分の持つコンテンツにどんな層が反応するかがわかりませんし、自分のターゲットも似て非なる層との境界を区別して理解している訳でもないので、狙い通りの属性と課題を持つターゲットのみが反応するように打ち出すことが難しいのです。

試しに開催してみて、実際の参加者層やその反応を見ることで、ターゲットの解像度が高くなり、コンテンツや打ち出しの焦点が定まって、狙い通りのの成果が出る確度が高まり、安定してくるのです。

集客は水物

刺されば何もしなくても人が来るといっても、絶対ではありません。全く同じ内容・条件でほぼ同じ時期に同じ場所やって、入りが3倍違うこともあります。確実に言えるのは、仮説検証と改善を重ねれば、刺さる確率が上がり、刺さればターゲットが参加する確率が上がる、ということです。確率の話しかできないし、確率である以上、なぜか外れることもある、ということです。

努力すれば確実に成果が出る訳でもありません。練りに練って絶対の自信を持って打ったものが全く誰も来ず、思いつきとノリで、片手間程度に作った企画が数百人来る、といったこともざらにあります。だから、色々な種類の「仮説」を試さないと、何がどうハマるか分からないのです。仮説を検証するには「結果」を見るしかないからです。

要件なき外注は金の無駄

コンテンツとターゲットと目的が整合していないのに「集客保証」だと言って人を集めても無駄です。

戦略も要件も曖昧な状態で、クリエイターにオシャレなスライドや映像を作ってもらっても、「戦艦大和」みたいなものです。自分で考えなければ仮説はできないし、自分で実行しなければ検証もできません。

ゴミを飾り箱に入れて全国にテレビCMを打っても誰も買わないし、間違って買った人は「騙されてゴミを買わされた」と怒り、二度と客になることはなく、下手をすると正当な悪評を振りまかれるのがオチです。

企画や集客を外部に委託すること自体が悪いと言うことではありません。ターゲットと目的が明確で、コンテンツがターゲットにとって価値がある状態で、全体の戦略における個別企画の要件が、発注者の中でクリアになっていない状態で頼まれても、何を作ればいいか分からない、ということです。

確実なのは「地上戦」

経験上、手数をかければ人は集まります。自分が知っている、コンテンツが刺さりそうな人に、相手ごとにアレンジした案内を、個別に送れば、BCCの一斉送信と比べ、はるかに高い確率で反応してくれるでしょう。

実は、個別勧誘が、特に立ち上げ段階で有効な点は他に2つあります。

1つは「相手の反応を見られる」仮説検証効果です。初期においてはまずターゲットの解像度を上げ、その課題感に刺さるコンテンツに仕上げ、相手に刺さるように打ち出すことが重要ですが、個別に案内すると、相手に刺さったか、どこの点に魅力を感じ、どこが改善点か、狙い通りに伝わったのか、説明不足やミスリードしていないか、などが分かります。実際にイベントを打って知らない人の反応を見るより、よほど多くのことが分かります。

もう1つが「熱量の伝播」です。個別に熱心に誘われた場合と、BCCの一斉送信やSNSのシェアで見たのとでは、好感や興味の度合いは自ずと異なるはずです。特に初期は案内文の焦点も曖昧で表現も洗練されていないので、自分に合わせてインタラクティブに説明されなければ、伝わらないことも多々あります。

よく「ファン化」と言いますが、自分の取り組みに共感してくれ、頼んでもないのに好意的に人に紹介したり勧誘したりしてくれる人が出てきます。実績も信用もなく洗練もされていない初期段階でそういう人はなかなかでないものですが、熱量が伝われば、未来の可能性を信じて、応援団になってくれる人が出てきます。

初期の成功はそういう人がいるかどうかで左右されたりします。そして、そういう人は一斉送信やシェアや広告では得られません。自分の身に置き換えてみれば、容易にわかることだと思います。

なぜ「人を集めなければ」と思ってしまうのか

すでに長くなったので、ここでは簡単に触れるにとどめますが、端的にいうと、上記のような目的やメカニズムを知らず、人が少ないとかっこ悪いと明確な根拠もなく(ないからこそ)思っていることです。上司やスポンサーや登壇者などの関係者がそう思い込んでいる可能性も高いので、その場合は目的などを明確に伝えて納得させなければなりません。

インセンティブが無目的に頭数を集めなければならない構造になってしまっていることもあります。独立採算の有償イベントで原価がかかりすぎているとか、スポンサードのKPIが人数になっている、といったことです。それは、その構造を作ってしまった時点で終わりです。

確実にできるのは「継続」の仕組みを作ること

立ち上げ期は、コンテンツが客に刺さるまで、目的と整合するまで、仮説検証と改善を繰り返すこと以外、セミナーを確実に成功に導く方策はありません。そこで最も確実にできる、最初にやるべきことは「継続できる仕組みを作る」ことです。

それは、コスト、特に固定費を最小にし、関係者を可能な限り減らして調整を最小にすることです。プロセスを標準化・自動化して、誰でも手間をかけずにできるようにすることも必要です。

私がよくやるのは「1人でやる」のと「突然人に振る」ことです。無駄が多ければ1人ではやり切れませんし、誰でもわかるよう整っていないと、何も知らない人が突然対応することはできないからです。さすがにそれをいつまでも続けるわけにはいきませんが、無駄に人員がいると非効率が見えなくなります。

こじんまりと、華やかさはないのですが、お金や才能を投入してアクセルを踏むのは、勝ち筋が見えてからやるべきだということです。

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