凡人のコミュニティ立ち上げに「地上戦」を勧める理由

凡人のコミュニティ立ち上げに「地上戦」を勧める理由

コミュニティを立ち上げ段階では、バズや広告などの「空中戦」に目が行きがちです。

しかし、その作戦が有効なのは、インフルエンサーやクリエイター、またはそういった人々への委託費や広告費がかけられる人に限られます。

そうではない「普通の人」は、直接勧誘などで1人1人地道に集める「地上戦」の方が確実です。

本稿ではその具体的なメカニズムについてお話しします。

「地上戦」と「空中戦」

地上戦とは、顔が見えて人となりが分かる関係の基盤がある人を直接誘ったり、そういう人からの紹介をもらうこととし、空中戦はその逆で、一度会っただけのfacebookの「友達」やTwitterのフォロワーへの情報シェアや、SNS広告のような全く知らない人にリーチする手段、と整理します。

空中戦:関係が前提→広告やバズなど
地上戦:関係は不要→勧誘や紹介など

初期に「空中戦」が機能しにくい理由

シェアや広告が効きにくい理由は以下です。

1)関係値のない人のシェアを見ても人は反応しない
2)刺さらない広告やツイートに人は反応しない

例えば、それまで一応facebookでつながっている程度の人と何かのイベントで再開した、あるいは、相談がありやり取りしたなどしたとします。

その後、その人が何か思い入れを持っている活動の投稿を見た時、人となりが分かったことで、それまで特にしなかった「いいね」をしたような経験はないでしょうか。

裏を返せば、個人的関係がない人の投稿はリアクションしにくいということです。

内容が明確で自分の関心のど真ん中であれば、広告や知らない人の投稿でも反応し、連鎖が拡散を生みます。

そのためには、ターゲットとその関心を的確に捉え、単体で人に刺さる明確なメッセージを投げなければなりません。

しかし、コミュニティの初期段階は試行錯誤の途上であり、ターゲットもメッセージも解像度が低いことが多いので、なかなかそういうことはありません。

まとめると、以下のような人でない限り、最初から空中戦を成功させることはできないでしょう。

・関係性の強いフォロワーが多数いる人
・波及力あるクリエイティブをコンスタントにつくれる人
・プロに委託したり、広告に投じたりする資金力のある人

まれにまぐれ当たりのようなバズが出ることがありますが、その確率は低く、そんなものを当てに待つことは妥当ではありません。

これが、普通の人には最初「空中戦」が向かない理由です。

人が人を呼ぶサイクルが最も強力で健全な推進力

コミュニティが健全に成長する基盤は、満足した参加者によるリピートと紹介です。

参加してみて、それが自分にとっても良いものと感じれば、自分の周りにいる自分と同じ課題感を持つ人を誘うでしょう。投稿があればシェアもしてくれます。

一見地味に思えるかもしれませんが、1人の参加者がリピートし、その人が3人ずつ連れてきて、その3人がまた3人ずつ連れてくる・・・という「ねずみ算」で考えれば、二次関数で時が経つほど急速に人が増えることがイメージできるでしょう。私もそのような経験があります。

勿論、実際は何人かに1人しかリピーターにはならないでしょうし、ライフステージの変化などでおやすみされる人もいます。熱心なファンだけど人を連れてこない人もいるので、そんな単純なものではないですが、だとしても、基本のメカニズムは変わりません。

そしてこれは、参加者各人の自発的行動の蓄積であり、煽ったり餌で釣ったり強制したりした結果ではないので、きわめて健全で持続的といえます。

小手先の施策に目を奪われるのではなく、大きな方向性として見失わないようにしましょう。

自発成長サイクルが回る4つの前提

コミュニティが健全に立ち上がり、自走して成長するサイクルが回るには、以下の4条件が必要と考えます。

1)何のために、どんな人が、どんな活動をするかの軸が明確である
2)場の趣旨に合致した、主体性の高い初期メンバーが集まる
3)主催者含む初期メンバー同士の健全な関係が構築されている
4)主催者がその場に思い入れを持って主体的に活動できる

しかし、コミュニティをこれから立ち上げる、あるいは活動し始めたばかりであれば、以下が現実でしょう。

・何を目指してどんな方針で何の活動をするか→曖昧
・参加者とその関係性→人がまだいない、関係も無い
・どんな実績があるか→これから活動するので無い
・活動の内容・負荷、得られること→曖昧

つまり自発成長サイクルの前提が何1つ無い、ということです。

勧誘による対話が初期課題を解決する

「地上戦」とは、この人なら自分の考えていることに賛同してくれそうだと思える人に、考えていることや思いの丈を伝え、相手の反応や意見を踏まえて、自身の考えや伝え方をより良いものに工夫するプロセスと言えます。また、これを通じて、相手との関係もできます。

以下のメカニズムで、前に述べた自発成長の要件を満たすことになります。

1)ターゲットと課題の解像度が上がる
2)自身の軸・原動力が明確になっていく
3)ターゲットに刺さる表現が洗練されていく
4)相手との関係が構築される

勿論、実績はありません。

しかし、未来を相手に明確に伝え、それが実現すると思ってもらうことができれば、過去の実績と確実な未来は同等となり、この実績の「鶏と卵」問題も解決します。

・これからこういう人を集め、
・このような活動をして、
・こんなことを実現し、
・それによってこんなものを得られる

相手が信じる根拠は、口説く側の明確なイメージと本気度が主でしょう。

これも多くの人との対話を通じて色々なことを聞かれたり、どう相手に伝えようかと考える中で、イメージも、それを伝える表現も場数の中で洗練されていきます。

本気度がなければ人を口説き続けることができないし、口説いている内に自分の中のイメージや根源的動機が明らかになり、本気度が高まる効果もあります。

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「共同創業者」の発見も重要

コミュニティの初期のブレークスルーをもたらす1つに「共同創業者」がいます。

主催者のパッションやビジョンに共感し、不確実な未来を一緒に形にしようと壁打ちに付き合ってくれたり、自発的に色々な取り組みをしてくれ、能力的にも精神的にも補完でき、ベースとなる価値観も同じで信用できる人、です。

まあ、そんな人は滅多に出てこないし、そういう人がないままそれなりに大きくなることもありますが、見つかると主催者の精神衛生にもいいですし、組織としての能力も上がります。

念頭におきながら勧誘していくといいでしょう。

上手く回り始めてからくる人は、現実的な利害に惹かれてくる人もいますが、海のものとも山のものとも分からない段階では、そういう手合いは混じらないので選びやすいし、立ち上げの苦労を共にすることを通じて関係値ができていくということもあります。

note(ノート)

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通常は以下が明確になっていないと、なかなかお互いに納得して自発的に動けるようにはならないでしょう。

・何を目指しどんな方針で何をするか
・どんな人がいるか
・どんな実績があるか
・どんな活動を通して何を得られるか
・求められる負荷は何でどれくらいか

自分の軸が明確になっていない中で人を集めるには、個別に口説いていくしかないでしょう。思いだけが先行していても、あれこれと話していると、自分の言葉もできてきますし、相手も徐々に言わんとすることが理解できてきて、人によってはそれに共感し、一緒にやろうという人も出てきます。

特に、以下のようなタイプが最初に反応してくれます。

・曖昧な状態でも自分のやりたいことを形にできる、動機と意思が明確な人
・主催者になら付き合うよ、という人
・立ち上げること自体に興味がある人
・自分が将来コミュニティを立ち上げる練習をしたい人
・やってみて判断するタイプの人
・何にでも手を上げる人

賛同した人々と、実際の運営というアクションをしてみれば、信用できるか、趣旨に賛同・合致している人か、場に価値貢献できる人か、適切に関係構築できるか、自律で動けるか、十分な能力があるかなど、運営メンバーとして適切かが、自ずから明らかになります。

運営を一緒にしていくのに必要な関係値も出来ていくでしょう。

結果として、主催者は運営メンバーを、運営メンバーはコミュニティを、相互に納得ずくで選ぶことになります。

軸も関係値もない段階での合議は無駄であり、迷走を招く

注意点として、この段階で人を集め、運営組織として「形」を作り、会議を重ねて何かを決めようとしても、徒労に終わります。

場をリードする主催者に「どうしたいか」の核がないと、他の人々は動機も熱量も目指すものもバラバラなので、足して割ったような、外から見てぼやけた魅力のないものができます。

また、関係値のベースがないので、コミットも引き出せなければ、相手への遠慮もあり、本質的な議論にもならないでしょう。

早く行きたければ、ひとりで行け
遠くまで行きたければ、みんなで行け

というのは、適切に人を選び、方向性が明確になった上での話であり、単に人を集めただけでは「烏合の衆」に陥ります。

目的や基準なく人を集めるのは、主催者の不安の裏返しだったりすることが多いので、時々自問自答するといいと思います。

まとめ

長くなりましたが、要点は以下の通りです。

・空中戦が有効なのは、インフルエンサー、クリエイター、お金がかけられる人に限られる
・満足した人がリピートして人を連れてくるサイクルが最も健全かつ確実な成長サイクル
・対話を通じてターゲット、軸、原動力が明確になり、個別に話すことで熱意も伝わるので、初期段階の課題が解決され、「人が人を呼ぶ」サイクルが回り始める
・個別に話すことで、コミュニティに重要な初期メンバーも集めやすい

目先や周りに惑わされず、ぜひ良い場を作ってください。

ご参考:オンラインのコミュニティ

ご参考:オンライン・セミナーのうまいやりかた