サラリーマンの多くは、社外よりむしろ、社内に向けてプレゼンテーションをつくることの方が多いのではないか。
私自身、CSKでの営業を振り出しに、同社の経営企画、Sonyの事業戦略や役員スタッフ、Samsungの事業開発と、さまざまな企業や職種を経る中で、部門の業績報告や来期予算申請、経営会議への重要案件報告などなど、数多くの社内プレゼンを作ってきた。
ある仕事で、社内プレゼンの作り方をレクチャーするにあたり、頭の整理を兼ねて、記事にまとめておこうと思う。
はじめに:なぜ、社内向けプレゼンが必要なのか
利害を同じくする社内の人に、わざわざ手の込んだプレゼンをしてまで、説得しなければならないのか。
それは、仕事の目標を達成するために、社内のリソースを投入する意思決定をしてもらう必要があるからである。
例えば、営業であれば、重要案件を獲得するために、トップマネジメントに動いてもらう必要があるし、経営スタッフなら、全社や部門の戦略を承認してもらわなければならない。予算を承認してもらわないと、お金も使えない。
マネジメントの時間も会社のお金も有限なリソースで、経営の観点からは、最も投資対効果の高いところに割り振るのが、当然の経営判断だ。「自社にメリットがあるから」といって、無条件に協力してもらえるわけではない。
個人事業なら、時間もお金も、自分で何にどれくらい使うか決められる。しかし、会社という他人の資産を使わせてもらう以上、利害関係者に、内容を適切に伝え、意思決定やアクションをしてもらわねばならない。
そういった説得のために、社内に対するプレゼンテーションが必要なのだ。
成果を出しやすくなる
面倒かもしれないが、結局は自分のためでもある。
役員の協力を得て重点顧客とのトップリレーションが構築できれば、営業成果を出しやすくなるし、新規事業への必要な投資予算の承認を得られれば、新規事業を成功に導きやすくなる。
個人ではできないことを、会社という組織のヒト・モノ・カネ・情報というリソースを活用することで実現するのだから、投資のようなものと、前向きに発想を転換した方がいい。
社内向けと社外向けの違い
内向けだろうが外向けだろうが、人を納得させて動かすという本質に変わりはないはずだ。では、何が違うのか。
前提として大きく違うのは、プレゼンする側とされる側が、互いに人となり、プロセス、事情などをよく知っている、ということだ。
営業の顧客なら、接する時間も限られているし、そうそう社外の人に情報など出さない。しかし社内となれば、会社や部門の目標や方針も共有されているし、自社組織では物事がどんな順序でどう決まっていくか、意思決定者がどんな考えのクセを持っていて、どんな立場で何に関心があるか、といったこともよくわかっている(というより、分かっていないと物事を進められないだろう)。
社内である分、込み入った詳細まで情報収集できてしまう。キーパーソンに狙い通り動いてもらい、自身の目標を達成するためには、それら個別具体の事情に合わせてシナリオを練り、ターゲットとなるキーパーソンの好みに合わせて資料を作り、根回しなどもした上でプレゼンするのが、最適行動となる。
社内プレゼン作成の流れ
作成の流れは概ね以下の通りで、当たり前だが、社外向けと変わりはない。
- 方針を定める
・ゴールを定め、シナリオを描く
・相手を知り、前提を把握する - プレゼンを作る
・骨子を組み立てる
・材料を揃える
・アウトラインの文章を書く
・スライドをデザインする - スケジュールを立て、進行を管理する
- 準備〜本番
- 事後フォロー
- 改善と仕組化
違うのは何かというと、それぞれのプロセスにおける具体的なアクションで、それは各章で説明する。
第1章:社内プレゼン、失敗の原因と対策
聞き手が、発表者より組織内での立場が上であることが多い社内プレゼンでは、身内である分、遠慮ないダイレクトな反応が返ってくることも珍しくない。
以下のような経験をした人も少なくないのではないではないか。
1)すぐに興味を失われる
プレゼンが始まって早々、相手が目に見えて話を聞いていない態度となる。紙で資料を配っていた時代なら、ページをパラパラめくるなど。
入り口のところで、相手が聞きたいことを示せていないと、こうなる。原因も、内容が芯を食っていないのか、伝わるようになっていないのか、そもそも聞き手のニーズを把握できていないのか、色々な段階がある。
2)プレゼン途中での質問攻め
聞いている内に聞き手がしびれを切らして、プレゼンを遮って矢継ぎ早に質問をしてくる状態。
この原因は、言っている内容に疑問が生じるものであるとか、生じた疑問を即座に解決する理由や根拠がない、といったことになる。それ以前に、表現が分かりにくいとか、サッと頭に入らない、ということかもしれない。
3)狙い通りの反応を得られない
説明は一通り聞いてもらえたものの、提案が却下されるなど。
理解できるが、納得できない、ということだ。提案が、自社や聞き手の状況を踏まえていないとか、論理の辻褄が合わないとか、根拠の信憑性が弱い、といった理由だろう。
「失敗プレゼン」の原因
上記の原因を整理すると、資料レベルでは以下のようになる。
1)ニーズや状況が把握できていない
- 相手の状況や、知りたいことを把握できていない
- 相手の知りたいことを端的に示せていない
2)ゴール、シナリオが曖昧
- 達成したいことやその達成シナリオが曖昧
- 伝えたいことが曖昧
3)情報が伝わるデザインになっていない
- 文章や図表が、「視覚的に」スッと頭に入りにくい
- 文章が、サッと読んですぐには分からない
4)論理構成の説得力が弱い
- 読んで生じた疑問に対する答えがない・すぐに分からない
- 全体の流れに納得感がない
- 説得の根拠の材料が疑わしい
あと、実際には、伝え方などもある。
失敗しないために、やるべきこと
では、どうすればいいのか。
1)何を、どう伝えるかを明らかにする
シンプルには、失敗原因の裏返しで、まずは「何を、どう伝えるか」を明らかにする。
- 聞き手のニーズや状況を把握し、
- ゴール、シナリオを明確にし、
- メッセージと論理を組み立て、
- 相手に伝わるようにデザインする
2)どうやるかを具体化する
また、上記のような「何をつくるか」を、計画通り実現するには「どうやか」、すなわち、きちんとスケジュールを立てて、実行する必要がある。
- いつまでに、何を、どれくらいの工数で完成させるかを決め、
- それを個々のプロセスをに落とし込み、
- 関係する人を洗い出し、
- いつまでに、誰が、何を、どうやるのかを決めた上で、
- 適切に相手にお願いし、
- 自らもやるべきことをやり、
- 仕組みをつくり、リスクを管理し、問題を解決しながら、
- 計画通り、成果物を完成させ、
- 目的を達成できるように、デリバリーする
という、いわゆるプロジェクトマネジメントに沿った考え方である。
あと、長い目で見れば、プレゼンすることはこれで終わりではない。次の機会では、より良いプレゼンをより効率的にできるよう、具体的な改善を積み重ね、仕組化していくことも、自身の成長の観点では重要である。
第2章:方針を立てる
プレゼンづくりで最もよくやりがちな、失敗につながる行動は「いきなりスライドをつくり始める」ことだ。目的もなく無闇に調べ始めることも同様。
なぜか。
プレゼンは、ターゲットもゴールも明確なはずなので、それらを明確にした上で、最小限の工数で、期限内にプレゼンを成功させることが求められる。
何を達成するか、相手が何を求めているか、定かではない状態で資料を作っても、無駄になる可能性が高い。
文章を書くのと同じ
ビジネスで報告書などの文章を書く場合、書き始める前に、何をどう書くかなどを整理するはずだ。
- この文書を通じて何を実現したいのか(目的)
- 読み手は誰で、どんな人か(対象)
- どんな内容を、どう構成し、どう伝えるか(内容)
簡単なメールでも、書くまではしなくても、頭の中で整理はしているだろう。
プレゼンも基本は同じと考えれば、目先の複雑さに惑わされなくなる。
プレゼンの方針を定める
孫子で有名な「敵を知り、己を知れば、百戦あやうからず」の言葉の通り、相手のことを理解し、自身の目的などを明確にすることから始まる。
1)ゴールを定め、シナリオを描く
行き先が定まらなければ、動き始められない。「何のために、何を実現したいのか」という、目的とゴールを定めることから、プレゼンづくりは始まる。
ゴールが定まれば、自身の現状とゴールとのギャップが明らかになる。
そのギャップを埋めるために、何が必要かも見えてくる。
いま自分が持ち合わせているものが分かれば、それぞれをどこからどう調達するかも見通しが立つだろう。
すなわち、ゴールに達するためのシナリオが立てられるようになる。
ゴールの種類
参考までに、私がいたある会社の経営会議では、議題を以下の3種類に分類していた。
1.承認:やるか・やらないか決める
→例:予算を承認してもらう
2.検討:参加者が議論して、アイデアを出す
→例:経営戦略を具体化する
3.報告:理解しておいてもらう
→例:重要案件の進捗を報告する
重要な社内プレゼンの落とし所も、概ねこんなところだろう。
「目的」もセットで考える
なお、上記はそれぞれ、より上位の目的があるので、それもセットに言語化しておく。
例えば予算なら、「〇〇事業を立ち上げるために、何億円の予算を承認してもらう」とか、案件進捗のインプットなら、「今後トップ営業が必要な時に協力を得るために、案件状況を理解しておいてもらう」とか、「部門の業績目標達成を大きく左右する、リスク情報を計画に織り込んでもらう」などだ。
そうしてゴールを定めたら、あとは現在地や自分のリソースについても把握する。
そうすると、どういう道筋を辿るか、選択肢が絞られ、仮説を立てられる。
2)相手を知る
プレゼンは、相手あってのことなので、相手について知ることも欠かせない。
例えば、投資に対する意思決定を下すCFO向けにプレゼンする場合、以下を把握する必要があるだろう。
相手の立場や状況
- 会社の業績や戦略など
- 組織における責任と権限
- 担当分野の状況や方針
- 推測される関心や動機
組織やプロセス
- 情報が上がるルート
- 他のキーパーソンとの関係性
- 意思決定のプロセス
- 実行のプロセス
案件について
- どれくらい知っているのか
- 前向きなのか、後ろ向きなのか
相手の性格など
- 案件の好み
- 見慣れた資料の形式
- どんな説明の仕方を好むか
このように、相手の立場、状況、関心、前提知識などを把握することで、どんなアクションをしてもらうために、どのツボをどう押すかのシナリオを立てれば、それを実現して目標を達成するプレゼンを、どう組み立てるのか、ストーリーが立てられる。
性格や人間関係などベタなことでも、内容に影響する情報なら集める方がいい。
3)前提条件を把握する
どれくらいの持ち時間があるか、枚数はどれくらいで、型は決まっているか、などの前提条件によっても、プレゼンのやり方も、資料の作り方も、変わってくる。
そんな、資料のつくり方やプレゼンのやり方に影響する主な要素は、以下のようなことだろう。
- 持ち時間
- 資料の枚数、構成、形式の指定
- 参加メンバーとその役割・関係
- プレゼン後の資料の使われ方
- 実施形態(対面、オンライン)
- 配布資料の有無・形式
- 視聴環境
例えば、持ち時間が短ければ、資料もそれに合わせて内容を絞る必要がある。形式に縛りがあるなら、それに従った上で、内容を作らなければならない。
メインのキーパーソンと利害の対立する立場の役員がいるなら、そこからのツッコミにも耐えられるような内容にした方がいいだろう。プレゼン後に資料が「一人歩き」して、さまざまな部門に参照されるなら、資料そのものだけを見てわかるよう、参考資料を充実させないと、後で見解の相違が生じることもある。
内容が良くても、資料が見にくいと、内容は伝わらない。どんな見え方をするのかによっても、資料のデザインを調整する。
小さい画面で見るなら、文字も図表も大きい方がいい。
明るい環境の中低い輝度のプロジェクターで投影するなら、色などのコントラストを強めにしないと、図や強調が見えない可能性がある。
最近は印刷することも減ったが、白黒で配布資料が印刷されるなら、色使いもそれに合わせないと、図が潰れて見えないこともある。
相手が見る環境で見やすいようにデザインしないと、相手の頭に入らず、目標を達せられない、ということだ。
4)どのように情報を取得するか
経営方針や会社の状況、どんな業績目標を課されているか、といったことは、IR資料や社内情報で把握できる。
それを常識的な範囲で分析すれば、ある程度の推測は立つ。
あとは、役員にはスタッフがいて、そういう人に聞くと、今どんな状況だとか、この人にはどんな出し方がいいとか、この資料はこうした方がいいとか、気の利いた人なら教えてくれる。
過去や直近に、その人にプレゼンを通した人にポイントを聞いてもいいだろう。
5)方針を固める
このようにして、当初立てた仮説に対して、情報を集めて検証することで、誰の、どんな関心に対して、何をどう伝え、どういうアクションを導くか明確になる。
そうすれば、どんなメッセージを、どういう構成と材料で組み立て、どう納得してもらうのか、シナリオが明確になってくる。
第3章:骨子をつくる
個々のスライドをつくる前に、まずは全体の構成をつくる。中心となるメッセージを定めたら、その主張を説得するのに必要な大項目をいくつか挙げる。
投資予算の申請なら、目的、概要、施策と用途、期待リターン、実施体制、など、基本となる要素を洗い出す。
その上で、サマリ、環境分析や備考など、プレゼン一般的な要素をつける。
そうして組み立てた大項目を、更に細かな小項目に落とし込む。例えば、施策なら、企画・調査、開発、マーケティング、営業、サポートなど、個々のプロセスに分ける、など。
さらにこの段階で、ページ単位まで項目を落とし込んでもいい。
この骨子は、とりあえずのもので、実際は、つくりながら組み替えていくこともよくある。
なお、会議体や案件により、構成や書き方が決まっていることもある。その場合は当然、そのテンプレートに基づいてつくる。
メッセージの流れをつくる
項目の構成をつくったら、それぞれに1行程度のメッセージや概要を記載していく。ドキュメントで流れを一覧できるようにしてもいいし、タイトルとメッセージだけのスライドをつくって、俯瞰したり、流れを見えるようにしてもいい。
上から下に要素を分解していく
まずは、メインメッセージから、大項目→小項目→各ページへと、ピラミッドの上部から下部へ落としていく。
素早く一通り書いた上で、上下の構造や前後の流れの筋が通っているか、以下のような視点でチェックしてみるといい。
- 下部のメッセージが上部のメッセージの根拠となっているか、必要十分な要素で支えられているか
- 下部のメッセージ群から上部のメッセージが導き出されるか
- 前のページを聞いて必要に感じたことが、すぐ次のページに出てくるか
- そのページを理解するための情報が、すぐ前のページで示されているか
まずはツカミ
聞き手が、自分の話を聞いてくれると思うのは間違いである。
まずは「これはあなたに関係があり、利益もあることですよ」と伝え、聞く気になってもらわないと、本編を聞こうと思ってもらえない。
聞き手の関心を事前の調査と分析で把握しておき、その関心に合わせて、プレゼンで話す内容の頭出しと、主たるメッセージの表現をアレンジする。
1スライド・1メッセージ
冒頭で「内容を聞いてみよう」と思わせても、スッと頭に入らないと聞き手はすぐに聞く気を失う。
聞く側に集中力を求めることはできないので、さほど集中しなくても聞き手の頭に入るつくりにする。
必要十分な内容で無駄がなく、分かりやすくて納得感のある内容にする第一歩は、1枚のスライドでいうメッセージは1つに絞ることだ。
1ページに複数の言いたいことが盛り込まれると、それを支えるための要素が増えてスライドが複雑になり、聞き手も理解しにくくなる。
同じ項目で言いたいことが複数あるなら、絞るかページを分けるかして、1スライド・1メッセージにする。
「シンプル」を心がける
文章は、必要十分な内容以外は削ぎ落とす。一文で言い切るくらいでいい。前提や理由などの修飾節を入れるとしても1つに絞る。まずは、一文に句読点が1つとイメージすればいい。
下書きの時点では、太線・下線・斜字、色なども使わない。フォント、字の大きさは、テンプレートで統一しておく。
ただし、最初からシンプルに書くと、必要な要素が抜けて内容が伝わらなくなりがちなので、まずは必要なことを十分書き切ってから、構成を見直し、余計な部分を刈り込むのが、手順としては正しい。
説得に必要な材料を洗い出す
上記でとりあえずの「ストーリーの流れ」がつくれた。
しかし、これらはあくまで、話し手の一方的な主張に過ぎないので、聞き手に理解・納得してもらうための「根拠」で補強する。
各ページのメッセージの下に、「これが言えるためには、こういう情報が必要」というものを、簡単にメモしていく。
例えば、「XX市場は成長市場で、参入に値する」ということを言いたいなら、その市場の規模や将来見通しの数字を、政府統計や調査会社のレポートなどで裏付ける、という具合だ。
配置する材料をイメージする
メッセージを支える素材は、おおむね以下のようなものだろう。
- 概念、プロセス、構造などを図にして説明したもの
- 数値を表やグラフで可視化したもの
- 識者やユーザーの発言
- 出来事を可視化した絵や写真
数字などは、統計情報など公開のものもあれば、社内の他部門にお願いしなければ手に入らないものもある。そのまま使える場合もあれば、加工・分析が必要なこともある。データベース会社などから有料で買うものもある。
図も同様で、自分で作る場合には、それなりに工数がかかるかもしれない。
発言などの定性情報も、インタビューが必要となると、入手が大変だ。
絵や写真も、無料ですぐ手に入るのか、自分で作るのか、制作委託や購入でお金がかかるかなどのパターンがある。
この後に制作のスケジュールを立てるので、それぞれについて、どこからどう手に入れるか、どれくらいの難度があり、どれほど時間や費用がかかるか、頭の中で軽く見積もっておくといい。
第4章:作成のスケジュールを立てる
まずは、本番(ゴール)から逆算して、プロセスと期限を細分化していく。丁寧にやると、例えば以下のような流れになるだろう。
Mtg:本番 →目標達成
〜最終の修正・準備期間
Mtg:最終レビュー、根回し
〜予備の時間
作成:本番資料完成
〜ブラッシュアップの時間
作成:スライド素案完成
〜素材を統合し、スライドを作成する
Mtg:方向性などの中間確認 *1~複数回
〜素材準備待ち&スライド制作の時間
〜素材提出をお願いする
作成:骨子とストーリーを完成させる
Mtg:重要な関係者に方向性を確認する
作成:骨子とストーリーの素案をつくる
〜方向性を決める情報の収集・分析
作成:概要の素案をつくる
←作成開始
こうしてプロセスプロセスを分解した上で、ゴールに近い重要なところから、期限を埋めていく。まずは本番の日程を入れ、最終レビュー、資料完成目安、というように。
想定より時間がかかったり、想定外の問題が発生して対応に時間を取られることも想定し、予備の時間を入れて、余裕を持たせておく。
工数の分量や関係者が多い場合、上記を、スプレッドシートなどで、プロセスの流れや実施項目を一覧化し、それぞれの担当や期限を関係者明記した工程表をつくり、関係者に共有して、認識のズレがないようにする。最近は工程管理が無料や安価にできるツールもあるので、それを使ってもいい。
各工程の工数と変動要素を見積る
骨子を組み立て、それぞれのページに必要な材料を洗い出したら、それらをどうつくるかの計画を立てる。
見積もる順番は、ピラミッド構造の上部からでも、前からでも、重要そうなとこからでも、つくりやすいところからでいい。大事なのは、とにかく素早くつくること。
作業量=かかる時間と、不確実性=遅れる可能性と、重要性や緊急度を念頭に、以下のような観点で分類してみるといい。
- 自分で作れるか、人にお願いしないといけないか
→人にお願いする方が不確実性が高まる - 社内で完結するか、社外の人に頼むか、既存の関係値があるか
- 費用がかかるか、承認などのプロセスが必要か
- すぐ手に入るか、入手にどれだけ手間がかかるか、入手方法が分かるか・そこから調べないとならないか、加工が必要か・不要か、どれくらい時間がかかるか・難しいか、など
→作業量や不確実性に影響 - 情報を集め分析しないと書けないなど、作成の前後関係があるか
→緊急度が異なる - 必須の要素か、あった方がいいレベルか
→重要性や緊急度が異なる
数字がないとグラフや表ができない、対象の市場が定まらないと統計などの数字が取れないなど、前の工程が完了しないと、後ろの工程ができない場合や、その前工程を他者にお願いしなければならない場合など、特に注意が必要だ。
分担を割り振る
前段で見積もったプロセスと工数・期限の「山積み」を、担当者のスケジュールに割り振る「山崩し」をしてみる。
例えば、XX事業に関する、過去3年の業界別受注金額の提出を営業部門に、損益金額の提出を経理部門に依頼する、といった具合だ。
そうすると、特定の人や時期に集中していているなど、リスクや実現可能性が見えてくるので、そのような全体のバランスなどを見ながら、最終的に妥当な内容に調整する。
各工程の性質は、以下に分類できる。
- 自分しかできないもの
- 人にお願いできるもの(誰でもできるもの)
- 人に頼めるが、一定のスキルや権限を必要とするもの
- 人にお願いしないと出来ないもの
自分でできるものは粛々とやればよく、他者との調整が必要なもの、言い換えれば、自分だけでコントロールできないものがあれば、早めに調整しておく。
自分だけで完結するとのなら、ここまで細かくやる必要はない。
第5章:スライド作成のポイント
スライドは、文章によるメッセージと、それを支える図表などのビジュアル要素からなる。本章では、それぞれのポイントについて述べる。
文章のポイント
各スライドのメッセージは、文章で書かれるので、まずは文章のポイントについて。
余談ではあるが、私がサムスン電子の企画部門で、グループ会長にも読まれる文書を作る時によく言われたことがある。
それは、超多忙な経営者が貴重な時間を割いて読むのだから、価値ある内容を簡潔に書け、ということだ。
例えば、衆議院選挙の結果が出たとして、何党が何議席取った、という事実関係だけでは不十分。それが、自社のどんな事業にどんな影響を及ぼし得るのか、それに対して、どんな備えを考慮しなければならないのか、という、経営の意思決定やアクションにつながる示唆が含まれていなければならない。
とはいえ、その内容を何ページに渡って詳細に書くわけにもいかない。分刻みで動く忙しい人なので、メインのトピックでも、文章と簡単な表など含めてA4のワード1ページ、その他は半ページくらい、コンパクトに収めることが求められる。
分量を絞るだけでなく、速読しやすく、すぐに内容が分かるように洗練することも必要。
以下のことを意識していたと記憶する。
- レイアウト(見出しや冒頭文)が見やすく、パッと見て頭に入る
- 論理構成が明快で、思考の自然な流れに沿っていて、納得感がある
- 記述が分かりやすく、簡潔
- 定量・定性の事実や推論などが、客観的で正確な材料から構成されている
- 図表はシンプルで明快
簡潔な文章を書くときには、以下のことを意識している。
- まず、相手の知りたいことを伝える
- 読ませるのではなく、「見せる」意識
- 頭から読んで自然に頭に入る流れ(時系列、原因→結果、前提→主張、など)。
- 必要最低限の要素で、簡潔に構成する。
- 田舎の母親/小学4年生でも分かる易しい表現にする。但し、相手の分かりやすさに合わせた、漢語・英語や専門用語とバランスも意識。
- 数字や固有名詞など、人による解釈の相違が生じない、客観的な表現にする。
ただ、最初からきちんとした文章を書こうとすると手が動かなくなるし、簡潔にすることを過度に意識するとむしろわからない文章になってしまう。
まずは必要なことを十分書き切ってから、構成を工夫し、無駄を削り、表現を改める。
デザインのポイント
下書きの時点では、色を使わず、線も文字も1種類で効果を入れず、とりあえず必要なことをラフに書き出す。
ある程度内容が固まってから、それを分かりやすくデザインする。
ここは専門ではないので、デザイナーの住谷もえみさんの受け売りをベースに紹介したいと思う。
フォント
圧が少なく読みやすい明朝体は、長い文章に向く。ピリッとするので社外プレゼンにおすすめ。Windowsなら游明朝、Macならヒラギノ明朝。
目立たせたいならゴシック体。メイリオやヒラギノの柔らかい印象のフォントは、社内プレゼンに向く。MSゴシックは文字間が狭く読みにくい、線が一律ではないなど、使いにくいので避ける傾向にある。
文字
大きさは、種類別にポイント数を分ける。
・見出し:36pt
・小見出し:30pt
・本文:18-24pt
出典などの補足情報は、流し見でいいと伝わるよう、9-11ptにする。
なお、最近はオンラインで画面共有することが多いので、印刷して見ることが当たり前だった時代と比べ、字のポイントを大きくする傾向にある。
文字は、色よりも、太字や下線で強調する。
グラフ
円グラフは凡例が必要で、視線移動が生じる。棒グラフの方が直感的に見やすい。
右→左は時系列を意識させるし、人間の目は左右より上下の方が動かしやすいので、単純な量の比較なら、上下に並べる横棒グラフにする。
時系列の推移を見るのには、折れ線グラフが適している。
背景の線、不要な数字など、標準で表示される余計な要素は消す。
色
同じ要素は同じ色で統一する。
強調したい要素以外はグレーにして目立たせる。全てグレーでも濃淡があれば見やすくなる。
ペーパーレスとはいえ、プリントされる可能性があるので、強調は濃い色にする。
カラーセットを作る場合
コーポレートカラーなどでメインカラーを決め、濃淡のバリエーションを3つ(100%、50%、25%)作る。
それに対してもう一色、強調用の色を選ぶ。基本はオレンジなどの目立つ色だが、メインカラーが赤・黄系列の注意色の場合、青系の色にするなど、コントラストとなる色にする。
素材の配置
あちこちに視点移動させないよう、要素を減らし、配置する。
人は、左や上から見始めるので、大事なこと、最初に見てほしいことは、左や上に配置する。
同じ要素は配置を寄せ、塊が分かるように上・下や左などを揃え、間隔なども調整する。
細かなことを挙げるとキリがないが、以上が基本中の基本として、まずは意識することだ。
第6章:他の人に作業を依頼する場合
他部署の人などに、スライドをつくるためのデータや情報などの素材や、一部スライドの作成をお願いする場合、いろいろな問題が生じ得る。
- 期限通りに出てこない、遅れる
- 出てきたものが、欲しい形式やレベルではない
しかし作成者は、それらにも対処した上で、スケジュール通り必要な品質のプレゼンを完成させる責任がある。
求めたものがきちんと出てこない原因は、おおむね以下だろう。
- 頼まれた側にとっての優先順位が低い。
- 頼まれた側が、何をすればいいか理解できていない。
そこで、これらを解決する工夫について述べる。
1)負荷を引き受ける姿勢を示す
営業と開発部門で一緒に案件を取りにいくような一蓮托生のケースでもない限り、他部門のプレゼンづくりへの協力は、頼まれる側にとっては、社内だし、頼まれたからやるけれど、というのが、正直なところだろう。
なので、相手の置かれた状況や心情を汲み取りつつ、以下のように、謙虚にお願いするといい。
- 相手の考えることや、手を動かすことを、依頼側で巻き取る工夫をする。
- 一緒に考え、一緒につくり、問題が発生したら、一緒に解決する。
- 要望や事情など、いつでも気軽に相談に乗るので、遠慮なく言ってほしい。
2)相手にとっての関連やベネフィットを考える
現実的には、一方的なお願いにならざるを得ないことが多いとはいえ、依頼内容が、相手の仕事にとってどんな関わりがあるのか、どのようなベネフィットがあるのか、こじつけでもいいから考えてみるといい。「自分ごと」にならないと、きちんと対応してもらえないからだ。
CFOに営業の数字をレポートするなら、販促費などの投資につながる可能性があるとか、何かしら理屈はつけられる。
もちろん、こじつけが過ぎると逆効果ではあるが、相手も「大人の事情」とわかっているはずで、配慮を見せる姿勢が大事だと思う。
あとは、相手部門の長などに、自部門の長からお願いしてもらうなどして、「上司からの指示」として自分ごとにしてもらう手もあるが、やり過ぎると嫌われるし、その手を使うとしても、謙虚にお願いする基本は外さないよう気をつける。
3)認識のギャップが発生しないようにお願いする
期待と近いものが出る可能性を高めるため、以下の必要な項目を、依頼する側に分かりやすく簡潔に説明するといい。
- 誰に何をどう伝え、何を実現したいのか
- そのためにどんな最終成果物をつくりたいのか
- それをつくるために、何の情報やスライドを、どんな形でほしいか
- どんな手順でつくればいいのか
頼まれた側が、どうすればいいか考えさせる要素は、可能な限り減らしたい。かといって、あまり細々書きすぎても読む気が失せる。
その塩梅を念頭に、簡潔な依頼文を心がける。
納期を納得してもらう
相手も忙しい中、いつまでにとせっつくのも気が引けるが「納期」も重要だ。
プロセスやスケジュールなどの背景事情も正直に伝えるといい。
テンプレートを依頼側でつくる
データの場合、スプレッドシートに項目や形式を入れておくなど、作業する側の面倒を、頼む側で予め対応しておくとスムーズだ。
頼まれる側にとって、以下のメリットがある。
- 依頼者の確認や調整が減る。
- 何をつくるか、どうやるか、考えなくて済む。
- 作業を効率的にできる。
- やり直しが発生しない。
スライドをつくってもらう場合
形式がバラバラなものが出てきて、見栄えを揃えるのに、余計な工数がかかることがある。
その問題を回避するため、予めスライドのテンプレートをつくって送る。その他のルールも、凡例のスライドを1ページつくって書いておくといい。
関心や前提知識の差異にも配慮する
自分では明確に伝えたつもりでも、相手が違う形で理解していることもある。
例えば、経理と、営業や開発とでは、数字に対する考え方も異なる。役割や関心が違えば、前提となる理解に差があることに気づかないと、言葉足らずの依頼をして、要望と違うものが出てきてしまう。
気の利いた人なら、依頼の背景などを自分で考えてくれるかもしれないが、相手はそこまでする筋合いもない。
要求を満たすアウトプットをつくるのは制作の責任者たる頼み手の責任である。相手に委ねるのではなく、自分で工夫する。
具体的な方法としては、前に述べた、背景などを説明する、成果物を明確に定義する、テンプレートを依頼側でつくる、などである。
4)相手に配慮した進捗コントロール
的確に要望を伝え、相手もその重要性を理解したとしても、相手のスキルや管理の問題で、悪意がなくとも、オーダーしたものが出てこないこともある。
成果物が出てくるまで、進捗や品質に問題ないか分からないのも、納期通りに要求品質を満たす最終成果物つくる責任者として、適切とは言えないだろう。
とはいえ、相手にとっても、ただでさえ余計な仕事な上、半人前の社員のように逐一確認されたら、面白くもないだろう。
そうならない配慮をする。
- 予め、相互に確認する時期を明示しておき、唐突感をなくす。
- 進捗の確認は、困りごとを一緒に解決するためのものという姿勢を示す。
- 不明な点があればいつでも聞いてほしいと、相手からも連絡しやすい関係をつくっておく。
5)相手に応じた対応
ちょっと心もとない人なら重点的なケアが必要だし、安心できる人なら、信じて任せる方が、相手にとっても心地いいだろう。
自分が直接知らない場合でも、過去に同じようなやり取りをした人などに、どんな人かや、対応のコツなどを聞くと、効果的にやり取りできるかもしれない。
次回以降も同じお願いをするなら、個人的な関係を築いておくといい。
他にも細々としたことはあるが、大事なことは、予定の期日までに、ターゲットの要求を満たす、自分が定めた品質の成果物や材料を手に入れること。
その基本から外れず、試行錯誤を重ねれば、上手くいく確度は高まっていくだろう。
第7章:本番までの準備
一通りのスライドを完成させたら、相手に伝わりやすくなるように、磨き込む。
文章の推敲
文章は、前の項で述べたように、以下の観点でブラッシュアップしてみるといい。
- 見出しや冒頭文が見やすく、パッと見て頭に入るようレイアウトされているか
- 表現が簡潔で、分量は適当か
- 田舎の母親/小学4年生でも分かる、平易で明快な言葉で書かれているか(但し、相手に応じて、効果的に伝わるように、漢語・英語や専門用語とバランスも意識する)
- 論理構成が明快で、思考の自然な流れに沿っていて、納得感があるか
- 定量・定性の事実や推論などが、客観的で正確な材料から構成されているか
- 数字や固有名詞などを用い、人による解釈の相違が生じない、客観的な表現になっているか
- 図表は情報やデザインが絞られていて、見やすく簡潔か
- 図表はメッセージを裏付けるものになっているか
その際、聞き手の視点でチェックすることも意識する。
- ターゲットから予想される質問に答えられるか
- 立場や前提知識などが異なる人にも理解可能か
- そういう人からの質問にも答えられる内容になっているか
- 余計な疑問の発生を回避できるようにできないか
ブラッシュアップしやすくする方法
以上のような視点を意識しても、スライドを眺めているだけでは、なかなか穴は見つけられない。自分で作り上げ、長い時間目にしているので、見慣れてしまっているからだ。
よって、目や頭を強制的に切り替えるいくつかの方法を試して、更に伝わりやすいものにする。
1)通しで話してみる
実際のプレゼンのように、一通り話してみると、改善点に自分で気づくことが多い。
- 話の流れが悪い、冗長
- 話とスライドが一致してない
- 表現が分かりにくい
- 要素が抜けている
何回か話した上で、スクリプトも書いて、視覚的に、論理や表現をチェックしてもいい。
ZoomやTeamsなどのオンライン会議ツールで、自分のプレゼンを録画して見返すのも効果的だ。
これも更に文字起こしして、視覚的にチェックすると、さらに改善点が見えてくる。
2)想定質問をつくる
株主総会の準備のように、さまざまなキーパーソンや、あるいは、全く前提知識のない人に成り切ってみて、その人が質問するであろうことを、文章に書き出してみて、その答えを書いてみるのもいい。
そもそもの関心から核となる質問をリストアップした上で、資料の1枚1枚に、読み手視点で細かくツッコミを入れていく。
目的は、質問をたくさん出すことではなく、聞き手の頭にすんなり入るようにすることなので、以下の観点でスライドや説明自体をブラッシュアップする。
- 質問に対して、回答できる材料があるか。
- その材料が、スライドに分かりやすく盛り込まれているか。
- そもそも、そのような疑問を生じさせないようにスライドや説明を工夫できないか。
もちろん、全ての質問に答えられるように情報を盛り込むと、資料が煩雑になるので、質問自体が本質的なものか、瑣末なものか、きちんと分別した上で、必要と判断したもののみ、スライドや説明に反映する。
3)フィードバックをもらう
以上は自分でできるものだが、どう工夫したところで、自分ひとりの視点や思考の切り替えには限界がある。
よって、他人にレビューしてもらい、改善点を教えてもらう。
的確なフィードバックをするには、案件概要やキーパーソンの関心などの前提がわかっている人でなければならないので、現実的な協力者は、上司や、同じ案件に携わるメンバーに限られるだろう。
何の説明もせず、先入観なく、感じたことを教えてもらうのもいいかもしれないが、前提知識やキーパーソンの関心などを改めてインプットした上で、どんな観点で、どんな点を、どのようにフィードバックしてもらいたいか、伝えた上でレビューしてもらう方が、効果的だろう。
事前説明と根回し
プレゼンはあくまで目的を達成するためにやるので、意思決定者たるキーパーソンがYesと言いやすくする地ならしや、聞き手の面々から本筋と関係ない質問が出て、議論が混乱するようなリスクの回避は、しておく方がいい。
ターゲットにしっくりこない内容や構成のまま、資料を磨き込んでも無駄になる。少し粗くても、ターゲットの関心や感覚に合うプレゼンにする方が、目標達成という観点では有効なことが多い。
いかにもサラリーマン的ではあるし、こういうことを良しとしないといわれる会社もあるが、大半の普通の会社では、根回しが必要で、案外効果的だったりする。
つくる前の方針立案のための情報収集段階で、関心などはある程度把握しているはずではあるが、時間がたてば、状況が変わっているかもしれない。
それ以上に、作成者も聞き手も、最初のヒアリングの時と比べて、前提知識もあるし、内容も具体的になっているので、説明や意見がより的確になる。
なので、直前に改めて事前説明をして、感触を探りつつ、内容も理解しておいてもらうことが有効なのだ。
- 資料は、相手が見慣れていて、好みに合っていて、頭に入りやすいか
- 説明に対する感触はどうか
- どこがなぜ引っかかり、どんな質問が出るか
- キーパーソンが他の参加者を説得するシナリオ(他の参加者につっこまれそうなところをどう想定し、どう備えようとしているか)
事前説明は、キーパーソンに対してできれば一番いいが、それができなくても、スタッフにインプットして、感触を探ったり、改善点を教えてもらうようにする。
フィードバックの内容によっては、スライドをゼロから構成し直すことだって、検討した方がいい。
運営面の制約条件を、改めて確認する
これもまた、つくり始める前に確認したことを、再度確認する。
忙しく我の強い人々を調整する会議であるほど、色々な変更が直前まで生じるので、最初に聞いたことから変更になっていることも少なくない。また、会議の開催が迫って、会議室やその設備など、具体的になることも多い。
以下で、特に資料のつくり方やプレゼンに影響する変更がないか、よく確認しておこう。
- 持ち時間
- 資料の枚数、構成、形式の指定
- 参加メンバーとその役割・関係
- プレゼン後の資料の使われ方
- 実施形態(対面、オンライン)
- 配布資料の有無・形式
- 視聴環境
資料やプレゼンの修正が必要な変更があれば、それも対応する。
練習する
上記により、いよいよ最終版が出来上がったら、あとは本番に向けて練習する。
通し練習をして、時間通り収まるか、ペース配分を確かめるところから、話す内容をこなれさせるまで、効果的にターゲットに伝わるためのブラッシュアップを重ねる。
前に述べたように、スクリプトを書いたり、録画して見返したり、それをさらに文字起こししたりすると、さらにブラッシュアップの精度が上がる。
人に聞いてもらい、フィードバックもらうのもいいだろう。
気持ちの余裕を持ち、堂々と話し、受け答えできるようになることも、説得力を増す点では、効果がある。
話し方のポイント
この内容は、元アナウンサーでスピーチコンサルタントの阿部恵さんに教えてもらったノウハウで、私も意識して実践している内容です。
- 母音と語尾ををはっきり発音
- 一文を短く
- トーンを高く
- 表情、アイコンタクト、身振り手振りを意識
トーンの目安は「ドレミファソ」の「ソ」の音といいます。
通常話をする声の高さでは、ボソボソと暗く聞こえるため、感覚的にいうと、普段より2音階くらい高くします。特に男性は声が低いので、強く意識する方がいいです。
準備と練習を重ねたら、あとは、練習の通り、本番でプレゼンをします。
第8章:プレゼン後のフォローアップと改善
プレゼンはやって終わりではない。無事承認されても、実行に向けたフォローが必要だ。
望んだ結果が出ないこともあります。却下や保留の場合でも、次の機会を見出し活かすために、善後策を講じることも視野に入れる。
情報を収集し、対策する
結果に関する情報を収集し、目標達成にどんな追加アクションが必要かを洗い出す。
承認であっても、理由や付帯条件など、実施の前提となる情報や、この後の具体的アクションを明確にする。
保留や却下だとしても、どこが問題だったのか、再度申請できるのか、どこをどうすれば通せるのか、分析する。
報告の類でも、反応などを、本人に聞けるならそれでいいし、スタッフに聞いてもいいだろう。
学びと仕組化
プレゼンが終わって、当座の目標を達成したとしても、それで終わりではない。
今後もプレゼンをする機会はある。次回はより効率的に、より精度の高いプレゼンをつくり、実行できるように、学びを言語化し、プロセスやツールなど、再現可能な仕組みとして整備しておく。
ふり返りはチームでやることもあるし、最低限、個人で整理しておく。
社内プレゼンの基本の流れは、以上の通りだ。
さいごに:実践あるのみ
これらはあくまで方法論の解説であり、これをできるようになり、レベルを上げるには、自ら機会を作り出し、考えながら試行錯誤し、反省の中から学びを蓄積していく必要がある。
ぜひ実践して頂きたい。