コミュニティをビジネスに役立てたいが、どうすればいいか分からない人のために、大学生でも分かるよう解説するインタビュー企画。
今回は、これまで会社を2社売却し、現在は起業家の支援をしている池森裕毅さんにお話を伺います。
コミュニティとの関わりは?
2004年に起業した1社目のビジネスでは、オンラインゲームのアイテムを換金したい人と、欲しいアイテムを買いたい人が情報交換し、売買をマッチングするコミュニティをつくりました。
直近では、林業スタートアップによるサバイバルゲーム愛好者コミュニティや、漁師のコミュニティの立ち上げを支援しています。
その他、起業家向けオンラインサロンを主催したり、経済産業省 近畿経済産業局と共同で、関西の若手起業家コミュニティを運営しております。
この記事で対象とするコミュニティ
オンラインサロンのような、コミュニティそのものから直接収益を得るものではなく、後で述べる、長期的に、間接的な効果を得るものが対象です。
また、法人向けのサービスより、個人向けのサービスを意識した内容になっています。
コミュニティとは?
意識・目的が一致している人々の集まりです。
起業家の観点でいえば、自社のサービスを熱烈に愛し、お金も払ってくれる「ロイヤルカスタマー」を増やす最も効率的な手段です。
コミュニティは先にうまく立ち上げた者の一人勝ちになりやすく、関係構築の積み重ねはお金の力で時間や手間を省くことはできません。
よって、お金も知名度も人手も少ないスタートアップが勝負する武器になるのです。
コミュニティの分類は?
大きく分類すると、「オープン」「クローズド」に分けられます。
例えば、私が支援しているスタートアップは、サバイバルゲームに関心あれば誰でも入れるオープンなコミュニティを運営しています。
そこで様々な楽しいイベントが頻繁に行われていたら、「ちょっとこのサービスを使ってみるか」という人も出て、新規ユーザー獲得に役立ちます。
一方、ユーザー限定のコミュニティは、動機や関心が近い同士で情報交換や課題解決がしやすくなり、やめるのがもったいなくなる効果があります。
コミュニティの効果は?
1)競合サービスに乗り換えるのを防ぎ、長く使ってもらう
コミュニティに価値があれば他社に乗り換えにくくなり、長く使ってくれる人が増えるので、売上も高くなります。
2)ユーザーの管理・育成コストが下げられる
熱烈な既存ユーザーが、新しく入った人を自主的に手厚くサポートしてくれたら、手間もコストも抑えられます。
3)ユーザーが新しいユーザーを呼び込んでくれる
身近な人に勧められる方が広告より信用されるので、新規ユーザーを効果的に獲得できます。
4)取引が増える
同じニーズを持つ人を囲っておけば、マッチングが成立しやすくなりますし、買い手をファンとして囲うことができれば、売上アップに役立ちます。
5)協力してくれる人が出てくる
イベントの運営スタッフやデザインなど、通常ならお金を払ってお願いする仕事を、ボランティアで引き受けてくれる人も出てきます。
コミュニティが向かない場合は?
つながることがネガティブになる客層や、公序良俗に反する内容のコミュニティは、コミュニティには向きません。参加者やビジネスの性質を見極めた上で、コミュニティが有用か判断します。
コミュニティ立ち上げのステップ
1)分野を決める
参加者の属性を絞り、目的、利用用途が明確にした方が、コンテンツをつくりやすく、マッチング精度も上がるので、「何のコミュニティか」を決め、どんな人が、何のために参加するのか、明確にします。
2)運営の肌感覚をつかむ
サービスの既存ユーザーや、自分の知り合いなどの中でターゲットに合致する人々に案内して最初のユーザーを集め、様々なコンテンツを提供しながら参加者のニーズを探り、運営しながら効率的な仕組みを確立していきます。
価値を生む初期参加者を巻き込む
政府や自治体、業界大手などは信用補完になりますし、その界隈のインフルエンサーは認知を広めるのに役立ちます。
3)参加者のニーズとコンテンツが噛み合う
ニーズとコンテンツがかみ合えば、コミュニティが盛り上がり、そこに惹かれて新しい人が次々と入ってくる、という流れが生まれます。
反応がいいコンテンツが出たら、以降のコンテンツに反映させます。個別ヒアリングやアンケートでニーズを聞いてもいいでしょう。
4)自走の確立
最終的には、参加者同士で投稿や拡散が盛り上がり、自分達で新しい企画などを立ち上げたり、運営の相当の部分まで担ってくれる状態が確立する状態を目指します。
自走化のポイント
コミュニティの立ち上げは地道なアクションの積み重ねです。必ずうまくいく、手軽な方法はないと心得ましょう。
知らない人の集まりで自発的に発信する人は限られているので、運営側の思惑通りアクションしてくれることは、基本的にはないと考えましょう。
1)目的などを事前に伝える
参加者が自発的に行動するためには、参加者自身が、何をしていいか迷いなく判断できる必要があります。コミュニティの目的を文章化し、個別メッセージなどで伝えます。
2)人に頼んで投稿をしてもらう
盛り上がりは自然に生まれるものではありません。仲の良い人に投稿をしてもらうように頼むなど、盛り上がりを演出します。
3)個人をベースとした関係を築く
投稿には、相手が投稿した内容やプロフィールをふまえた内容で、必ず返信するなど、個人として扱った対応をします。
運営側も、必要以上にプライベートを晒す必要はありませんが、一個人として顔が見えるようにします。
4)双方向のやり取りが生まれる投稿をする
たとえば、「在宅ワークはどんなところでやっていますか?」といったような、気軽なリアクションを促すカジュアルな投稿も効果的です。
5)一緒につくる
参加者も運営や構築に参画する方が楽しさを感じます。ロゴを一緒に決めるとか、イベントを皆で企画するなど、皆で盛り上がれるプロジェクトのネタを探していきましょう(ただし、関係ができてから)。
6)有益な独自情報を発信する
運営側の情報や、どこでも手に入る情報ばかり一方的に発信しないようにしましょう。
コミュニティ運営を学ぶ方法は?
下手に記事や本を読むより、自分でやってみる方が学びになります。
自分が興味をもてる活発なコミュニティに入ってみるといいでしょう。主催者に話をきくのも参考になります。
最も良いのは、ちょっとしたものでいいので、自分で企画し、人を誘い、運営してみることです。
注目しているコミュニティは?
農林水産省の官僚から、シェアハウスを起業した柚木さんが運営する「シェア街」というコミュニティは、活動も非常に活発で、方法論も確立されていて、学びが多いと思います。
noteでも積極的に情報発信しているので、ぜひ覗いてみてください。