カオスマップの法的リスク

カオスマップの法的リスク

自身が作成したカオスマップがメディアに掲載されて、業界の誰もが知るまで拡散した経験を元に、カオスマップについて徹底解説してみようと思います。

今回は、マップ作成・公開の際に懸念される以下の法的リスクについて。

1)他社のロゴを勝手に使っていいの?(商標権
2)既存と同じ分野のマップを出していいの?(著作権

マップを作成・公開する人が増える中、気になる法的リスクについて、相談・判断のお役に立てれば幸いです。

本稿は、複数の弁護士の意見を基に、筆者が参考としてまとめた記事です。
弁護士間でも見解を異にする論点もあります。カオスマップを作成・公開する場合は、専門家にご相談の上、各自ご判断ください。
なお、本件では弁護士の方々にアドバイスを頂きました。非公式のため敢えてお名前は伏せますが、お礼申し上げます。

1)ロゴを許諾なく使って問題ない?(商標権)

公開されているほぼ全てのマップにはロゴが載っており、問題になったという話はあまり聞かないので「問題なさそう」な気はしますが、法的な裏付けは取っておきたいでしょう。

TechCrunch

TechCrunch • Reporting on the business of technology, startu…

商標登録されているロゴは、商標権を持つ者が法律に基づき使用権を専有しています。他者が使用する場合は許諾が必要で、許諾なく使用した場合、商標権侵害で罰せられます。

カオスマップにおけるロゴの使用が商標権侵害になるかどうかは、マップが、自他商品の識別機能を果たす「広告」と判断されるかどうかによります。

ロゴの使用を、自他商品の識別を目的とした「広告」と、識別を目的としない「記述的表示」とに分けた場合、前者は商標権の侵害になりますが、後者の場合はならない、とのことです。

参考として、比較広告のために他社のロゴを使用することが商標権の侵害に当たるかについての判例があります。

判例では、比較広告における他社のロゴ使用は、自社商品を説明するための「記述的表示」であり、自他商品の識別機能を目的とする「広告」ではないので、商標を侵害したとは言えない、としています。

「比較の対象である原告商品を示し,その宣伝内容を説明するための記述的表示であって,自他商品の識別機能を果たす態様で使用されたものではないというべきであり,商標として使用されたものとは認められない」
東京地裁 平成20年12月26日 判決

この考えに基づくと、カオスマップにおけるロゴの使用が、特定業界の主なサービスとそのカテゴリを示すための「記述的表示」であれば、許諾なくロゴを使用しても、商標の侵害には当たらない、ということになります。

商標侵害となるリスク

とはいえ、弁護士によっては、「本来許諾が必要であり、特に不都合がないため企業側が黙認しているだけで、法的リスクはある」とする意見もあります。

また、商標権を持つ企業と係争になった場合は、最終的に侵害とはならずとも、係争の過程で自社の信用を毀損するリスクもあります。

実際の対策例

あくまで商標権を侵害する意図がないことを示すため、以下の注記を入れている例もあります。

●本カオスマップは当社独自に作成しており、サービスの網羅性や正確性を完全に担保するものではありません。
●商標およびロゴマークに関する権利は、個々の権利の所有者に帰属します。
●掲載に問題がある場合や、次回更新時に掲載を希望する場合は下記までご連絡ください。

連絡先:abc@xxxxxx.co.jp
本カオスマップ掲載ページURL :https://www….

商標権侵害で係争するリスクを避けるため、ロゴではなくテキストで掲載している事例もあります。(出所:NTTデータ経営研究所)

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コンプライアンス的には正しいのでしょうが、どうしてもインパクトに欠ける部分はあります。

私の作成したマップの事例

私が作成・公開した際は、クレームは1件もなく、むしろ「うちを入れて下さい」という連絡が何件かあったくらいです。「自社がカオスマップに載りました!」とプレスリリースを打っていたところすらありました。

BUSINESS INSIDER JAPAN

国内不動産テック業界の全体構造を把握するためには必見のカオスマップだ。…

質の低いマップを作ることによる問題

調査精度が低く、カテゴリ分けがいい加減で炎上しているのも見たことがあります。安易に作ると痛い目を見ます。

法的リスクとしては、不正競争防止法2条20号の「品質内容等 誤認惹起行為」や社会的評価の低下による損害賠償に該当する可能性があるようです。

現実の可能性としては低いでしょうし、多額の賠償が発生するものではないでしょう。

実際作ればわかりますが、企業の活動はそんなに簡単に割り切れるものではありません。単に検索してリスト化するだけなら子供でもできます。公開情報を分かる限り掘り下げ、正確性を可能な限り高めた上で、情報としての価値との狭間で割り切る判断をするからこそ、パッと見て分かるものができるのです。

「適当に作って出せばバズるだろう」という下心が見え透く、30分で作ったようないい加減なマップを晒すこと自体、能力かモラルが低いことを晒すだけになるので、やめた方がいい気がします。

2)同じ分野のカオスマップを出してもいい?(著作権)

同じ分野のカオスマップが既に他から出ている場合があります。

自社のPRを目的としているのに、先行のものがあるからといって、無関係な業界のマップを作る訳にもいかないでしょう。

例:3つの「スポーツテック カオスマップ」

例えば同じ年に3つの「スポーツテック」マップが公開されています。

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スポーツテック カオスマップ 2020.ver
https://note.com/embed/notes/na4a3b67cc619

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著作権侵害リスク

先行するマップに依拠して主要な部分が共通していると、あるいはより端的に言うと「同じ分野で同じカテゴリで作ると」著作権侵害とみなされるリスクがあります。

他社のカオスマップをそのまま利用した部分がある場合には,参考文献として引用してください。

とはいえ、カオスマップは、一定の範囲に含まれるサービスを、ビジネスモデル等に基づいて区分したのもを、せんべつ一覧化したもの。

ビジネスモデルの違いで分類するのが基本で、カテゴリが作成者によって大きく変わるとは考えにくいです。

よって、範囲を狭めたり広めたりする、海外のものまで含める、数を多くする他、マップが古いものであれば最新にするなど、違いを明確にする必要があります。