カオスマップ「よくある誤解」

過去4回にわたりカオスマップの作り方と広め方について書きましたが、今回はよくある過剰な期待や誤解、その他諸々よく聞かれることについて書いてみようと思います。

原則:「特定範囲」の「プロダクト」を「選別・区分」したもの

改めて原則を示しておきます。1つはある根拠に基づいて範囲が決まっているということです。その範囲の根拠は読み手の関心です。

例えば不動産テックなら、不動産デベロッパーだとして、自社ビジネスにポジティブ、ネガティブなインパクトを及ぼす可能性のあるサービスや企業の存在を、いち早く漏れなく把握すること、となるでしょう。

そうして範囲が決められたら、あとはそこに含まれる認知可能な全てのプロダクトをピックアップして、それをビジネスモデルなど一定の根拠でカテゴライズして、掲載基準を定めて選別し、1スライド上で一覧できるように配置します。

具体的には、カテゴリごとに枠でくくりカテゴリ名をつけ、その中にロゴを貼り付けます。ここから自ずと言えることは以下の通りです。

・表示できるのはロゴとカテゴリのみ
・1枚の中に示せる情報量にする
・カテゴリは最大2階層、重複なし
・一覧性、網羅性、納得感が重要

その前提の上で、よくある「やりたがるけどできないこと」となぜそれが適切でないか、併せて述べてみましょう。

市場規模、売上、シェアなど「定量情報」を見せたい

「表示できるのはロゴとカテゴリのみ」なので、数字は載せられません。

売上などに応じて大きさを変えるとどうかというと、売上が殆ど無いスタートアップと何千億円の大企業を1枚のマップに置こうとすると、情報として意味のないものになります。そもそもスタートアップの定量情報は殆ど取れません。

定量情報を示したい場合は

リストやインフォグラフィックスが良いでしょう。ただ、スタートアップの定量情報は取れないものが多いので、そもそもの目的が既存プレイヤーの整理である場合に適した手法でしょう。

2軸でポジションを示したい

私も最初に作ったマップでは2軸を置いてみたものの、バージョン2からは外しました。適切に配置できないからです。

マップには範囲の中のプロダクトを一覧できるよう隙間なくロゴを配置することになります。よって、座標やカテゴリ間の距離に意味を持たせることはできません。

また、多様なカテゴリを2軸や4象限で綺麗に分けることもできません。

ポジショニングを示したい場合は

そもそも自分たちの立ち位置を際立たせたい場合、特筆すべき比較対象のみを選別すればいいので、そこに網羅的に情報を載せる必要はありません。

なので、4象限のポジショニング・マップや、比較表で対応すれば良いでしょう。

ビジネスモデルやバリューチェーンなどの構造を見せたい

マップで見せられるのはカテゴリだけです。そこに「メディア」「仲介・マッチング」「シェアリング」などのビジネスモデルの情報で括ることはできますが、構造そのものを見せられるわけではありません。

同じマップで全てのカテゴリをビジネスモデルにすることは、論理的には可能であっても、それが読み手にとって意味のない「分類のための分類」情報になってしまうのであれば、マップとしての価値がなくなります。

バリューチェーンなど、その他の構造的な情報も同様です。

構造を示したい場合は

構造化されたチャートを使う方がいいでしょう。本屋に行けば必ず売っている、戦略コンサルタント出身者が書いたチャート集のような本から、自分の示したいものに合うものを選んで使ってみるといいと思います。

ベン図のような集合で表現したい

やろうと思えばできますが、それよりも、複数のカテゴリに同じロゴを入れれば済みます。

読み手が知りたいのは、各カテゴリの中にどんなプロダクトがあるかで、優先されるべきはカテゴリの枠の方です。1カテゴリに1つにしなければならないというルールもありません。

MECEやApple to Appleにしたい

いわゆる「漏れ無く、ダブりない」「比較するなら同レベルのものでなければならない」ということはありません。

それを厳密にすることにこだわるより、「ビジネスへのインパクトがありそうなカテゴリを漏れ無くカバーして、それぞれの中の主なプレイヤーが漏れ無く拾われていて、それを一覧で確認できる」という、視覚的な情報価値の方を優先すべきだからです。

実際、同じマップの上で「仲介・マッチング」「メディア」といったビジネスモデルで括ったものもあれば、「VR」「IoT」などテクノロジーで括ったものも混在しています。それはその括りの方が読み手にとって役立つ情報になると考えたからです。

大量の情報を載せたい

「900サービスを載せました!」という”マップ”がありますが、そこまでくると、「パッと見て何か情報を得られる」情報量をはるかに超えています。

マップに掲載する数は、200~300くらいまでが適当な数ではないかと思います。それを大幅に超えると、ロゴが小さくなりすぎて、何を示しているのか分からないものになります。もはやマップとは言えないでしょう。

根本的な原因としては、読み手の範囲が広すぎて、対象サービスが広すぎることにあります。そもそも、読み手やスコープを考えてすらいないのかもしれません。

大量の情報を載せたい場合は、スプレッドシートなどでリストにした方がいいでしょう。スプレッドシートなら情報を加工しやすいので、ユーザーにとってはその方が便利です。

付随情報を載せたい

繰り返しになりますが、マップで示せるのは「カテゴリ」と「ロゴ」なので、経営者や資本金や・・・といった付随情報は示せません。これも上と同様リストにした方がいいでしょう。

示唆や提言を載せたい

マップで示すのはあくまで全体観とカテゴリなので、それをどう受け取るかは人によります。

そこにメッセージを載せたいなら、マップ材料として、そこに考察や示唆を加えたレポートやプレゼンテーションを作る方がいいです。

最初に不動産テックのマップを発表する際は、コンサルタントの方にマップを材料としてレポートを出してもらいました。

基本はプロダクトのロゴを載せる

基本は企業ロゴではなく、商品やサービスといったプロダクトのロゴを載せます。プロダクトの方がカテゴリと合致しやすいし、1企業が複数プロダクトを展開している場合も分かりやすく分けられます。

例外もあります。例えば、大手のITベンダーが複数のプロダクトを提供していて、それを載せると数が多すぎ、カテゴリも同じなので情報としての意味をなさない、といった場合です。その場合は企業ロゴを入れます。

そもそもサービスのブランドがないSIerなどもそうします。

あくまで、厳密さではなく、一覧にしたときの情報としての価値に重きを置きます。

結論:「見やすさ+分かりやすさ」を最優先

良いマップは、素人が見ても分かりやすいだけでなく、業界のプロが見ても納得感と発見があるものです。

カテゴリ枠の上下が揃っているマップは、パッと見で「見やすい」印象がします。最初に枠の配置を決めないと綺麗には揃いません。

配置を決めるには、カテゴリ内にあるプロダクトの数に応じて枠のサイズを決め、マップ上に置いて、バランスを調整します。

枠のバランスをどう取るか

実際、あるカテゴリに大量のプロダクトが集中することがあります。小規模事業者が参入しやすい構造のビジネスと、上位寡占になりやすいものがあるからです。

その場合、そのままにするとやたらとでかい枠になるので、その中で商材の違いやポジショニングの違いなど、何かしらの要素で枠を分割したり、何かしらの基準で足切りをして数を減らすなどの方法で、各カテゴリのバランスが取れるようにします。MECEやApple to Appleにならないのはこのためです。

配置に少し意味を持たせる

各カテゴリを2軸に分けて配置できなくても、近しいものを近くに置くことは意味があります。販売寄りのもの、業務効率系のもの、ファイナンス系のもの、テクノロジーカットのものなど、明示こそしなくても、近しいものを寄せれば分かりやすいし、玄人には意味を感じることもできるでしょう。

また、明確な軸は置けなくても、右から左に「川上から川下へ」、上から下に「フロントからバックオフィスへ」などのように、気持ちレベルで属性の近いものを置いていくこともできるでしょう。

カテゴリは配置の関係から色々なレベル感になるので、綺麗に軸に沿わせることはできませんが、意図は示せます。

また、カテゴリ内でのロゴの配置も同様です。厳密な定義はできなくとも、規模の大きいところから上に配置する、近いビジネスモデルのものを近くに置く、などで情報としての価値を少し増すことができます。

ただし、それらは無理にやる必要はなく、そうした方が読み手にとって情報の価値があると判断できる場合に限ります。

作ってみると分かります

上記のような質問はだいたい作ったことのない人が頭で考えて思い浮かぶものですが、いざ手を動かしてみるとたちどころに、直感でわかるはずです。

まずは気軽に試してみてください。

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