カオスマップをつくる基本プロセス

カオスマップをつくる基本プロセス

自身が作成したカオスマップがメディアに掲載されて、業界の誰もが知るまで拡散した経験を元に、カオスマップについて徹底解説してみようと思います。

今回は作り方の全プロセスについて。

5つの基本プロセス

カオスマップとは「業界の商品やサービスをカテゴライズして一覧化したもの」です。その作成手順は、大まかには下記の通りです。

1)”業界”=範囲を決める
2)プロダクトを調べてリストアップする
3)調べたプロダクトをカテゴリで分ける
4)基準に基づき掲載するプロダクトを取捨選択する
5)1枚のスライド上にプロダクトのロゴを配置する

範囲:読み手を定め、範囲を絞る

なぜこのカテゴリはカバーされ、別のカテゴリは対象外なのか、明確な境界とその根拠がなければ、マップは恣意的にロゴを羅列しただけのものになります。

その境界を決めるのが、「読み手」ですが、それは1つに定まらないことが多いです。例えばEdTechのマップをつくるとしたら、EdTechスタートアップだけではなく、教育サービス事業者、学校の経営者・スタッフ、教員、研修会社、受講者やその親(子供の場合)など事業サイドのプレイヤーから、VCなどの金融機関、コンサル、役人、研究者など、周辺業界の関係者も見る可能性があります。

それら潜在的な読み手のどこからどこまでを対象とするか、その人々は何に関心を持つのか、それはなぜかまで考えます。例えば、既存の塾の経営者なら、オンライン教育など自身のビジネスモデルを根本から変えるものは、機会であれ脅威であれ、把握しておきたいはず、といったことです。

もちろんこれらは最初から明確に定められる訳ではありません。自分が未経験の業界なら尚更です。ただ、読み手が誰かを具体化しておけば、その立場にある人が関心を持つことは調べる内に自ずと分かってきて、範囲を定める根拠となります。

実際調べていくと、このプロダクトやビジネスモデル入れるべきか否かの判断に迫られることが多々あります。その際に、これは想定する読み手の誰の関心にかかるのか、それはその人にとってどのような機会や脅威になるからか、と考えると、それが判例のように積み上がり、境界を決める判断基準となっていきます。

調査:カテゴリを深掘りしながらリストアップ

EdTechのカオスマップをつくるとして、”EdTech”という検索ワードで出てくるものだけをピックアップしても、価値あるマップにはなりません。様々な専門用語で調べたり、AIなど汎用的な要素技術に関わる企業の提供サービスが教育産業の特定分野に破壊的創造を起こすこともあり得、それらは表層的なワードで調べただけではカバーできないからです。

さらに深掘りして、業界の専門的なところまでカバーしつつ、ビジネスモデル、バリューチェーン、要素技術などの影響を把握しないと、プロにとっての情報価値あるマップにはなりません。

リスト化はビジネスモデルをイメージしながら

そうしてプロダクトをリストアップしていくことになりますが、その際、単にホームページや記事にある基本情報をリストの定められた欄に作業的に入れていくのではなく、一手間かけて、そのプロダクトのビジネスモデルや、ディスラプトや効率化する対象などを考えてみると、調べることが単純作業化せずに済むだけでなく、後で分析・カテゴリ分けする際に的確な判断ができるようになります。

調査に慣れている人なら頭の中で考えるだけで良いですが、そうでないなら最初の内は都度図示しても良いかもしれません。これは目的や掛けられる時間や工数によりますが、市場を理解するのには役立つものです。

リストの中にも「カテゴリ」欄を設け、仮置きでいいので、根拠を持って都度カテゴリを決め、いくつかまとまった段階で見直す、ということを重ねていくと、徐々に頭の中にカテゴリの全体像が浮かび上がってきます。

ちなみにカテゴリは最終的には1~2階層にしますが、調査の段階では多いと5階層くらいまでいくことがあります。

カオスマップのつくり方-配布用 (3)

分類:「ビジネスモデル」で分けるのが基本

マップは情報の一覧性に価値があるため、厳密にApple to Apple(比較対象のレベルを合わせる)やMECE(漏れなくダブリなく分ける)である必要はないと考えます。

カテゴリをビジネスモデルで分けるということは、カテゴリ間で明確な違いがあるので、明確な違いが言えなければなりません。例えば、このカテゴリは広告モデルで、もう一つのカテゴリはマーケットプレイスのモデルで、扱う商材は同じだが、ビジネスモデルが明確に違う、といったような説明です。

ビジネスモデルの分類は、業界によってそれほど大きく異なるわけではないので、一般的なフレームワークなどをベースに、簡単に分ける自分なりの枠組みを持っておくと便利です。以下は私が不動産テックのカオスマップを作った際の記憶を元に作ったものです。

カオスマップのつくり方-配布用 (5)

「調べ尽くした」時が調査の潮時

リストアップは何社やれば十分かという基準は定められません。範囲により異なるからです。読み手の視点であらゆる角度(キーワード)で調べ尽くして、もう何も出ないだろう、というところまできたら、それが終わりの目安です。それは調べた当人が感じることです。

数で言えば、150〜200くらいあれば、そこから取捨選択してもパッと見で情報価値のありそうな密度のマップができると思います。ただしあくまで本質は中身の価値であり、数があればいいというわけではありません。

選別:基準を設けて「足切り」

最初のマップは選別するというより、あまりにも情報がなく、実体がない、もう継続していなさそう、といったものを落としていくのが現実的な対応でしょう。

よく資本金や売上で基準を定められないかと考える人もいますが、スタートアップの情報は取れないことの方が多いので、考えとしては良さげに聞こえますが、実現可能性の低いものです。

配置:1枚のスライド上でのバランスを調整する

マップは1枚のスライドの上に載せなければなりません。カテゴリを分けていくと、特定の分野に偏ったりします。不動産なら、資本がいるものは少数寡占になりやすく、メディアのような誰でもできるものは数多くのプレイヤーがひしめく、といった状況です。リストの数そのままでやると、1つ2つのカテゴリがマップの大半を占めることになりかねないので、大きなところは分割したり絞ったりして、カテゴリ間でサイズがアンバランスにならないように調整します。

ある業界で、特定のビジネスモデルに属する企業が圧倒的に多いという場合は、そこを商材の違いなどで分割し、一方で、プレイヤーの数が少ない分野は似ているが違うビジネスモデルを1つにまとめるなど、厳密性を追求してカテゴリが過度に細分化され見にくくなるくらいなら、ざっくりとしたくくりにして見やすくする方を取るべきでしょう。

2軸で分けようとする試みもうまくいかないことが多いです。マップには隙間が許されないので、縦軸・横軸の座標の置き場所に意味を持たせることができません。2軸で綺麗に分けられるのは、何かのメッセージを明確にするため、比較対象を意図的に絞った場合であって、網羅的にピックアップしたもので2軸に分けられることは、基本あり得ないからです。

とはいえ、配置に何かしらの意味を持たせたいとも思いますので、例えば、右から左に向けて、仕入れサイドのビジネスから販売サイドのものを並べるとか、近しいビジネスを近くに配置するとか、そのくらいで十分です。

カオスマップのつくり方-配布用 (4)

カテゴリは基本1階層

調べた当人はどうしても厳密に考えてしまい、違うものを同じカテゴリに入れたくない気持ちになります。そうするとついカテゴリの中にサブカテゴリを作ってしまいがちですが、これは基本読み手にとって見にくくなるだけの自己満足の行為です。

もちろん例外もあります。私が「良いマップ」の事例でよく挙げる「副業カオスマップ」は、それが有効になっている例ですが、それは異なる読み手の視線誘導の意図が明確にあるため、見やすいものになっているからで、自己満足に因るものではありません。

公開すると情報が寄ってくる

考え抜いて調べ切って作った質の高いマップであれば、業界の関係者にすぐに行き渡るかもしれません。そうすると色々な反応があります。そのマップが良いものとみなされると、載ったことを嬉しがるスタートアップの経営者が、Twitterで「マップにのった!」と呟いたり、プレスリリースを打つところすらあるのを見たことがあります。何の権威もない、どこの誰が作ったともしれないマップなのにです。

一方で、「うちを載せてほしい」といった連絡も時々きます。「ここの会社も載せるべきだ」という老婆心に満ちた提案もあります。どんなに調べ尽くしたつもりでも、最初は必ず抜けがあるので、そういった情報はありがたいものです。すぐにマップのアップデートはできないものの、次のバージョンを出す際に入れてあげると返し、実際そうすると喜ばれます。

企業だけでなく、メディアやイベント主催者、時にはVCから連絡が来ることもあります。寡聞にして、クレームを言われたと言う話は聞いたことがありません。何の権威もない新興企業が作った、根拠が明確でないマップであっても、掲載されることは嬉しいことであり、むしろ外されることは切ないことなのでしょう。興味深いことです。

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